かつてはシャンパーニュの一部としてワインを生産していたエリアのRM的生産者
“シャティヨネ”で造る個性的なクレマン ド ブルゴーニュ
国 | フランス |
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地域 | ブルゴーニュ |
歴史 | ゲラエール家は、4世代にわたり葡萄栽培を行なってきた家系。 1991年 クロードとスリスティーヌが設立 2001年 自家元詰めを始める。それまでは組合に葡萄を売っていた。 生産するワインの90%がクレマンで、すべて自家畑の葡萄を使用。 |
オーナー | クロード ゲラエール |
葡萄園 | 合計7ha 全体の50%がピノ ノワール、50%シャルドネ |
栽培 | リュット レゾネ(減農薬栽培) |
<情報リンク>
クレマン ド ブルゴーニュの王国 ”シャティヨネ”
ドメーヌ クロード ゲラエールは、ブルゴーニュ地方の北部に位置するシャティヨネの小さな村、モッソン(Mosson)の家族経営の生産者です。シャティヨネは、シャンパーニュ地方のコート デ バールの南に位置しており、歴史的にシャンパーニュ地方の一部として葡萄栽培やワイン造りが行われてきました。しかしながら、AOCの制定時にブルゴーニュ地方に分類されたため、シャンパーニュのワインとして生産することは出来なくなりました。
ブルゴーニュワイン委員会(BIBV)によると、シャティヨネには2000年前には葡萄畑が存在しており、8~9世紀頃から19世紀にかけてワイン生産が盛んとなり、非常に高い評判を得ていました。1953年には、紀元前6世紀に造られた、高さ1.64m、容量1,100L、重さ206.8kgの巨大な「タートヴァン(タストヴァン)」が発掘されたことでも有名です。しかし、フィロキセラ禍と経済危機によって葡萄畑は壊滅の一途を辿りましたが、1980年代以降、地元の葡萄栽培農家の情熱によって危機を脱しました。現在、エリア全体で約250haの栽培面積があり、クレマンの品質の高さが認められ、「クレマン ド ブルゴーニュの王国」と称されています。
100%自家畑の葡萄にこだわる家族経営の生産者
ゲラエール家は、4世代にわたり葡萄栽培を行なってきた家系です。1987年に、モッソンがブルゴーニュのAOCのエリアに認められたことをきっかけとして、1991年にクロードと妻のクリスティーヌが会社を設立し、自分たちだけの初めての葡萄を植えました。穀物栽培や酪農を並行して行いながら徐々に畑を増やしていき、現在はモッソンとビセイ ラ コートに合計で7haの葡萄畑を所有しています。全体の50%がピノ ノワール、50%がシャルドネです。栽培はリュット レゾネ(減農薬栽培)です。葡萄は組合に販売していましたが、2001年にようやく自分たちだけのワインを生産することができました。生産するワインの90%がクレマンで、すべて自家畑の葡萄を使用するRM的生産者となっています。現在、クロードとクリスティーヌの息子、サミュエルがドメーヌに参加し、さらに高品質なワイン造りを行なっています。
栽培について
「私たちは、この地域にとってピノ ノワールとシャルドネがベストな品種だと考えています」とクロードは話します。畑は粘土石灰質土壌です。植えている品種の割合は、ピノ ノワール50%、シャルドネ50%です。畑には、土壌の流出を防ぐために木片を撒いています。見学した畑はクロード ゲラエールが所有する中でも最も良い畑で、標高280mに位置しており、葡萄の平均樹齢は30年です。クレマン ド ブルゴーニュの規定に基づき、葡萄の収穫は100%手摘みで行っています。「私たちは、100%自家畑の葡萄を使用してワイン造りを行なっています。家族3人だけで年間を通して仕事をしています。収穫の時は25名ほどの季節労働者を雇います。2023年の生育状況は今のところ順調ですが、まだ霜害の心配があります(5月24日時点)。2022年は質量ともに非常に良い出来でした。2022年のリザーヴワインを保持することは、今後生産するワイン全体の品質を上げる要因になるでしょう。2021年は冬があまり良くなかったため、スティルワインの赤は生産しませんでした」。
醸造について
ドメーヌ クロード ゲラエールでは、年間で最大6万本ほどのワインを生産しています。プレス機は、2013年から空気圧式に変更しました。中のバルーンが膨らむことで、葡萄を均等にプレスすることが出来ます。「以前まではスクリュータイプのプレス機でしたが、空気圧式の方が高品質な果汁を得ることができます。低い圧力でゆっくりとプレスするほど、果汁の品質は良くなります」とクロードは話します。プレスは1日に2~3回行います。1回につき、4,000kgの葡萄を4時間かけてプレスします。優しく圧搾した果汁はまずタンクに移し、24時間静置することで澱下げを行います。その後、上澄みの綺麗な果汁を発酵用のタンクに移し、1~1.5週間かけてアルコール発酵を行った後、マロラクティック発酵を3週間ほどかけて行います。この工程により、酸が和らぐことでワインの甘みが増します。
アルコール発酵では熱が発生するため、タンクの温度を下げる必要があります。発酵タンクが置かれているセラーは、冬になるとドアを開けることで自然に温度を下げています。「昔は大きなタンクを使っていたので、自然に冷やすのには限界があり、人工的に冷やしていました。現在は、こうした自然な方法で温度を下げるようにしています」。
収穫翌年の2月にすべてのタンクのキュヴェを試飲して、最終的なブレンドを決定します。その際に、クレマンにするか、スティルワインにするかも決めるため、どちらの場合も使用する畑は同じです。スティルワインの赤は良い年にのみ生産しており、2019VTは生産することが出来ました。クレマンについては、4月にベースワインをボトルに移し、糖分と酵母を加えて瓶内二次発酵の工程に入ります。この工程を「プリーズ ド ムース(Prise de Mousse)」と呼びます。14度で約3週間かけて二次発酵させた後、12~18ヶ月熟成させます。その後、発酵を終えた酵母を取り出すために瓶口に澱を集める動瓶(ルミアージュ)という作業を行います。
動瓶では以前は木製のピュピトルを使用していましたが、現在はジロパレットという専用の機械を使用しています。ジロパレットの容量に限りがあるため、最後の方にプレスしたロットは入り切らないことがあり、そうした場合にはピュピトルを使うこともあります。また、マグナムなどの大容量瓶もジロパレットには入らないので、ピュピトルを使用しています。4時間に1度、5日間かけて少しずつ瓶を傾けることで澱を瓶口に集めます。その後、瓶口を凍らせて澱を取り除き、「門出のリキュール/リキュール デクスペディション」を加えるドザージュという作業を行い、甘口や辛口、極辛口などのクレマンの最終的な味わいを調整します。
また、今後新たに上級クラスのクレマンを造ろうと考えており、新しくフードルを購入しました。シャルドネ100%で、タンクで発酵させた後、フードルで熟成させたベースワインを使用して造るクレマンですが、樽の香りを付けようとは考えていません。
「オークの風味をつける生産者もいますが、私たちは、葡萄そのものが持つナチュラルなフレーバーを活かしたいと考えているため、樽香をつけるような造りはしていません」とクロ―ドは話してくれました。
ヴィンテージ表記について
ドメーヌ クロード ゲラエールのワインは、表ラベルにロットNo.が掲載されています。例えば、右の画像では「L1-18」とあり、2018VTであることを指しています。次のページで各商品について紹介していますが、公的な表記ではないためノンヴィンテージとして掲載しています。NVの表記の横に( )で表示しているのがヴィンテージです。クレマン ド ブルゴーニュでは、シャンパーニュ同様、伝統的に複数ヴィンテージをブレンドすることがあるため、ドメーヌ クロード ゲラエールではラベルにはあえてヴィンテージ表記を行なっていないそうです。