2012年はアイスヴァインに挑戦しない人が多かった。私は極甘口の“有名人”なのでリスクをとって挑戦した
国 | ドイツ |
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地域 | ラインヘッセン |
オーナー | ハインフリート デクスハイマー : 1950年生まれ。 ダニエラ : 娘 マルコ : 娘婿。普段は別の仕事をしているが、収穫時にはワイングートをメインに働いている。「普段は室内の仕事だから、畑に出て自然の中で仕事をするのは楽しいよ」とマルコは話していました。 |
葡萄園 | 10ha 昔から葡萄が植わっている畑で、祖父から引き継いだときに、市場が求める品種を植えていった。 ケルナー6ha、フクセルレーベ1.2ha、ショイレーベ1.2ha、オルテガ0.8ha、グラウブルグンダー0.6ha、 ジーガーレーベ0.75ha : 早熟で糖度が高い。ジーガ=「勝者」で、甘口のチャンピオンの意味。この村では唯一の栽培者。 その他 ドルンフェルダー1.3ha、ポルトギーザー1ha
<畑の違い> ヴァインハイマー キルヒェンシュトゥック : シーファーを含むローム(25~40%粘土を含む土壌)、トーニック(泥質)土壌 ハイマースハイマー ゾンネンベルク : 石灰を含むレス(黄土)、粘土質土壌
<葡萄品種について> フクセルレーベ : ピーチのような個性。品質、収穫量とも安定していないため、近年多くの生産者が興味を失っている品種。たくさんの房を実らせる。通常はQ.b.A.のワインを造る。アウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼを造るためには春から剪定を始め、収穫量を十分落とす。アイスヴァインを造るには品質のばらつきがあり、収穫のタイミングも非常に難しいため造らない。 ジーガーレーベ : デクスハイマーが栽培している他の葡萄に比べ早熟。そのためアウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼクラスが造れる確率が高い。ハインフリート自身はジーガーレーベが一番好き。品質が高いだけでなく、ハイクラスのワインがほとんどの年で造れるため。 オルテガ : デクスハイマーの葡萄品種の中ではエース的な存在。毎年アウスレーゼ以上の葡萄が収穫できる。ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼも他品種に比べれば割と簡単、適した時期に摘み取れば問題なし。 バッフス : ブーケの強い品種。近年人気を失っている品種。大手メーカーなどは個性が強すぎるため嫌っている。それに加え育成も難しい。房が熟成前に落ちてしまうことも多い。 シルヴァーナー : こちらはバッフスと対照的に房が落ちにくい品種。そのためハイクラスも割りと造りやすい。 ショイレーベ : 晩熟で、葡萄が健全な状態を保ちやすい品種。しっかりと完熟しいい状態で収穫できる。 |
栽培 | 肥料は、ワインを絞った後のカス、カリウム、マグネシウム、窒素。 |
<情報リンク>
「丘のくぼみに冷気が流れ込む」 ラインヘッセンとは、「千の丘の土地」という意味で、低い丘がいくつもあって、その間のくぼみに冷気が流れ込み、アイスヴァインが出来る気温(-7℃)になります。また、ボトリティスはなるべく後に付いたほうが良いワインが出来るので、いつもボトリティスが早く付かないように努めています。ボトリングラインは、所有せず、衛生管理の行き届いた専門の会社に依頼し、コストを抑えることに成功しています。40%を瓶詰めし、60%はバルクで売ってしまいます。2011年から、温度調節可能なステンレスタンクを導入、低温での発酵が出来るようになりました。
「素晴らしいアウスレーゼ以上のワイン、目を引くボトルやラベル」 アウスレーゼ以上のハイクラスのワインに見るべきものがあり、ご紹介するワインの多くは、私どものために特別に瓶詰めしていただいています。ゴールドやオレンジメタリック、透明シールのラベルが、目を引きます。
「アイスヴァインのスペシャリストを自負」 「毎年アイスヴァインを造ろうと、ひとつひとつ毎年同じ畑仕事をして準備しているが、それでも最後は天候次第。まさに賭けだ。毎年、1~1.5ha、アイスヴァイン用に葡萄を残す。’13VT、’14VT、’15VTは努力にも関わらず、収穫に至らなかった。もしこれが無ければ、私は1年のうち4ヶ月は休めるだろう。それでも、私はアイスヴァインにこだわる。大変だがアイスヴァインを造らない人を羨ましいとは思わない。アイスヴァインは本当に心臓に悪いが、こうして出来たワインを見ると、いつもやって良かったと思う」とハインフリートは語っています。
<全くの個人生産者>2006年ワイナリー訪問時
デクスハイマー家は、アルツァイの近くの丘陵地帯でワイン造りをするまったくの個人生産者です。20年以上も私どもと取引があり、とりわけアウスレーゼ以上のクラスのワインは昔から定評があります。
<千の丘の土地>2017年ワイナリー訪問時
ラインヘッセンとは、「千の丘の土地」という意味で、低い丘がいくつもあって、その間のくぼみに冷気が流れ込み、アイスヴァインが出来る気温(-7℃)になります。
<アイスヴァインはギャンブルなんだ。>
デクスハイマーでは毎年、1~1.5ha、アイスヴァイン用に葡萄を残します。ひとつひとつ毎年同じ畑仕事をして準備していますが、それでも最後は天候次第です。ドイツワインの法律では氷点下7度以下にならなければ、アイスヴァインとして葡萄を収穫できません。そのため2013年、2014年、2015年は冬まで葡萄を収穫せずに葡萄を残していたにも関わらず、収穫まで至りませんでした。畑の準備、病害対策、そして、実が付き始めると、葡萄にボトリティスが付かないように房の周りの余分な葉を落とし、風通しをよくします。また、空砲を発砲したり、葡萄樹にネットを張ったりと、獣鳥の被害対策もしなければなりません。収穫時期には天気予報を毎日チェックして、-7℃になりそうだったら畑に向かい、葡萄の実を触って凍っているか状態を確かめます。何日も何日もこうした作業を繰り返します。自分の狙った収穫のタイミングを逃してしまわないよう、この時期はほとんど睡眠をとらない日が何日もあります。アイスヴァインには、まさに生産者の苦労と献身が詰まっています。
「私はベーレンアウスレーゼ、アイスヴァインを造るのでシュペートレーゼの収穫が終わっても気が抜けない。とても大変だ。他の生産者はシュペートレーゼの収穫が終われば、一息できる。私はそれが出来ない。残しておいた葡萄が凍らなければアイスヴァインは造れない。アイスヴァインはギャンブルなんだ。近年、温暖化の影響で葡萄が凍らない年が続いている。だから、アイスヴァインに挑戦する生産者は減っている。もしこれが無ければ、私は1年のうち4ヶ月は休めるだろう。それでも、私はアイスヴァインにこだわる。大変だが彼らが羨ましいとは思わない。アイスヴァインは本当に心臓に悪いが、こうして出来たワインを見ると、いつもやって良かったと思う。」と2017年に訪問した際にハインフリートは話していました。2016VTは4年ぶりにアイスヴァインが造れた年で、このヴィンテージについて語っていただいた2017年の訪問はでは、とても満足したハインフリートの姿がありました。
<貴腐葡萄を使うTBAとBA>
トロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)とベーレンアウスレーゼ(BA)は写真のような貴腐葡萄で造ります。ボトリティス・シネレア菌という菌が葡萄に発生することで、葡萄の実から水分が抜け、果汁の成分が濃縮されます。これによって葡萄の糖度が高まり、また特徴的な芳香を生みます。この状態を「高貴なる腐敗」と例えたことから、貴腐と名付けられています。
貴腐葡萄造りも決して簡単なものではなく、畑のケアには、2つ問題があります。1つはビネガーフライ、もう1つは野鳥の被害。ビネガーフライは近年の地球温暖化によってドイツにも表れた害虫で、葡萄の実を傷つけることで、果汁が漏れて腐敗を起こします。ハインフリートは毎日畑に出て、高貴な腐敗なのか、単に腐ってしまったのかどうか葡萄をチェックしなければなりません。また、野鳥に対しては空砲で妨害する人を雇っています。朝から日の入りまで空砲を打ってもらい追い払っています。
そして葡萄を守るだけでなく、品質を高めるために行っている作業もあります。「カビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼ用に一部を先に摘み取ることで残った葡萄の糖度をさらに高くする。」や「ボトリティスはなるべく後に付いたほうが良いワインが出来るので、いつもボトリティスが早くつかないように努めている。」といったハインフリート言葉には、極甘口のスペシャリストらしいこだわりが感じられます。