5世代にわたり脈々と受け継がれる、ザール リースリングの奥深い味わい。
伝統的手法で生み出される繊細で軽やかな白ワイン。
国 | ドイツ |
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地域 | モーゼル |
歴史 | 1880年 ヨーゼフ ハインリッヒ ワグナー(ハインツ ワグナーの曽祖父)が設立。 1898年 現在のセラーが設立 2009年 クリスティアーネが参加。 2011年 クリスティアーネがオーナーとなる。 |
オーナー | クリスティアーネ ワグナー : 1983年生。5代目。2008年ガイゼンハイムのワイン学校を卒業後、ロバート ヴァイル、ファン フォルクセム、ヴィショフリッヒャー・ワイングート(トリアー)等で修行。 「この家族経営のウィングートを私に継承させてもらえることを、非常に誇りに思っている。」と2009年に訪問した際に語っていました。 |
葡萄園 | ザールブルガー ラウシュ2.6ha、ザールブルガー クップ2.4ha、オクフェナー ボクシュタイン1.6ha
<2つのグローセ ラーゲ> 通常はボクシュタインよりエレガントなワインとなる。直線的で、酸は弱め。舌先に塩味を感じるのが特徴。 ザール村から4km。他のザールの畑と同様、粘板岩土壌だが、粒子が細かく粉になって土となったものの比率が高い。そのためにオクフェンの葡萄畑はより広がりや幅のある味わいとなり、花の香りがあり、酸が豊富になるために甘口に仕上げる。 |
栽培 | 畑は、そのすべてが、鋤を付けたウインチを使うか手で作業をするしかない険しい斜面。それぞれの葡萄樹は、ハート型に1本の木の柱にくくりつけています。葉は少なくなり、糖が高くなりません。 畑に草を生やすとシーファーを覆ってしまい、その保温効果が無くなってしまうので、生やしていません。 肥料は2002年頃に石灰を一度撒いたきりで、土壌を検査して必要な所に手で撒くようにしています。土を柔らかくするために、北ドイツの湿地帯から取り寄せた苔を土に混ぜています。 |
<情報リンク>
株式会社 稲葉のルーツともいうべきワイナリー
日本で40年近く愛されている、ザールを代表する小さな個人生産者
「その日本からのバイヤーは、明らかに感銘を受けていました。そして、かつてから彼が探し求めていたものは、ザール リースリングであったことに気がついたのです。しかし、彼はそのとき大量注文はしませんでした。何故なら彼は、日本の市場はまだこの類のワインを受け入れる段階ではないと思ったからです。とは言え、彼は好奇心旺盛な日本人であり、すでにドイツワインに詳しくなった人や他の人々を、ザール リースリングにある豊富な酸味を受け入れるように先導していくであろうと確信しました。彼は、この有名な葡萄園の主、ハインツ ワグナーを励まし、ザールにおける葡萄栽培の伝統を決して忘れることのないよう、またザールワインの伝統的な味筋を守っていくように言いました。とかくするうちに日本の顧客は、イギリスやアメリカに並ぶほどに増えました」――この文章は、ドイツで発行された「WEINGUTER IN DEUTSCHLAND」より抜粋したもので、「日本からのバイヤー」とはおよそ40年前にワイナリーを訪れた私たちのことです。その時私たちは、ドクター ワグナーのワインこそが最も典型的なザールワインであり、この素晴らしい味わいのワインを、もっと多くの人々に知らせるべきだと思いました。
クリスティアーネが引き継ぎ、さらに洗練された味わいへ
世代交代直後の2011年に「コレクション オブ ザ イヤー」を受賞!
ドクター ワグナーは、1880年にヨーゼフ ハインリッヒ ワグナーによって設立されました。現当主は女性醸造家として活躍するクリスティアーネです。クリスティアーネは、2008年にガイゼンハイムのワイン学校を卒業後、ロバート ヴァイル、フォン フォルクセン、ビショフリッヒェ ヴァインギューター トリーアで修行し、2011年にワイナリーを引き継ぎました。2011VTは、世代交代後初めて迎えたヴィンテージであるのにもかかわらず、ドイツの『デア ファインシュメッカー』誌による「コレクション オブ ザ イヤー」を受賞しています。これは同VTのラインナップにおいて、全てのワインがハイクラスであるという評価によるものです。また、同誌の2015.08号の「ザールのワインはベストになりうる」という記事で、同じザールの生産者であるエゴン ミュラーと同格の生産者として評価されています。
「モーゼルよりも涼しくスレートの個性が感じられる」ザールの特徴的なテロワールを表現しています
ライン川の支流であるモーゼル川、そしてその支流のザール川、ルヴァー川の流域のことを総称して、モーゼル ザール ルヴァーと呼んでいましたが、2007年よりこれらの地域はモーゼルという呼称に統合されました。ドクター ワグナーは、ザール川に面するザールブルクに位置するワイングートで、ザールブルクの銘醸畑「ラウシュ」やオクフェンの「ボクシュタイン」などから、素晴らしいワインを手掛けています。ザールの葡萄畑の土壌は、デヴォン期の青色粘板岩で、砕けた細かな粘板岩が多いため、中流域のワインよりも甘さが目立たず、酸も細かく繊細でエレガントになることが特徴です。
また、中流域より南に位置していますが、気候はザールの方が涼しいこともワインの味わいに影響しています。ドクター ワグナーのワインは、豊富な酸がありながらも他のザールワインより尖った味わいではありませんが、これは古い大型の木樽を醸造に使用しているためです。畑は、鋤を付けたウインチを使うか、手で作業するしかないような険しい斜面にあります。それぞれの葡萄樹は、1本の木の柱にハート型にくくりつけています。畑に草を生やすとスレートを覆ってしまい、その保温効果が無くなってしまうので、生やしていません。土を柔らかくするために、北ドイツの湿地帯から取り寄せた苔を土に混ぜています。
伝統的な大樽熟成によって生み出される深みある味わい
ドクター ワグナーでは、昔ながらの大樽(フーダー:1,000Lの木樽)を使った醸造を今でも行なっています。樽の使用年数は平均30年以上で、一番古いものは1921年製のものです。ワインを古い木樽で発酵・熟成させることによって、それぞれの樽のワインが違う成長をし、違う味になるというメリットがあります。また、ザールに特有の強い酸味が、他の成分と調和することでまろやかな口当たりや深みのある味わいが生まれます。発酵は温度調整をせずに、自然のままで2~3週間かけて行います。その後1ヶ月半ほど澱と共に寝かせて丸みを出し、エレガントな味わいに仕上げています。
クリスティアーネの代になり、さらに洗練された味わいが完成していますが、ワグナー家によって脈々と受け継がれてきたクラシックなザール リースリングの味わいは今も生きています。温暖化の影響もあり、アルコール度数の高いしっかりとした味わいのワインが多くの国で造られるようになりましたが、ドクター ワグナーのように、冷涼なザールの気候やスレート土壌がもたらすミネラル感をありのままに表現した、繊細で酸味豊かなワインを探すのは難しくなってきました。日本のお客様に40年近く愛され続けるザール リースリングの深みある味わいを、ぜひお試しいただきたいと思います。
「リフトに乗り、畑で作業するクリスティアーネ」 クリスティアーネが引き継いでも、ワイン造りのスタイルは変えていません。辛口に関してはむしろ品質が良くなったという印象を持つ程です。フォークリフトに乗ったり、硫黄の散布をしたりといった作業は、クリスティアーネがしています。女性醸造家は増えていて、学校で醸造を勉強した女性は多くても、実際に畑に行ったりセラーでひとり作業したりする女性は滅多にいません。
<評価>
『ファルスタッフ2022』で4/5F、『ヴィヌム2019』で3/5星、『ゴー&ミヨ ドイツワインガイド2019』で3/5房、『アイヒェルマン2019』で3/5星。「ヒュー ジョンソン ポケット ワイン ブック2019」で、オクフェン、ザールブルグの優良生産者として、赤★★→★★★で掲載。V.D.P.メンバー。クリスティアーネが引き継いで最初に迎えたヴィンテージである2011VTで、ドイツのグルメ雑誌『デア ファインシュメッカー』による「コレクション オブ ザ イヤー」を受賞しました。これは同VTのラインナップにおいて、全てのワインがハイクラスであるという評価によるものです。また、同誌の2015.08号の「ザールのワインはベストになりうる」という記事で、エゴン ミュラーと同格の生産者として評価されています。
<30年以上の取り扱い生産者>(2005年訪問時)
写真はクリスティアーネ ワグナー(左)、父のハインツ(中央)、母のウルリーケ(右)です。ワグナー家と当社は1980年にドイツワインの輸入を始めた当初から取引のある、今では数少ない生産者の1つとなりました。
<ザールで最も古い地下セラー>2017年ワイングート訪問時
ワグナー家の館の地下には、1898年に建設されたザールで最も古いセラーがあります。セラー内には1000Lのフーダー樽がところ狭しと並んでおり、そのすべてが30年以上使い続けている古樽です。一番古い樽が1921年のもの。ワグナーでは伝統的にこの古いフーダーですべてのワインを造っています。新しいバリックを使うと木の香りがワインに移ってしまい良くないのに対して、古いタルは調度良い酸化をもたらし、全体のバランスを整えて良いハーモニーをもたらします。
<2つのグローセ ラーゲ>
どちらも南向きの急斜面の畑です。
通常はボクシュタインよりエレガントなワインとなる。直線的で、酸は弱め。舌先に塩味を感じるのが特徴。
ザール村から4km。他のザールの畑と同様、粘板岩土壌だが、粒子が細かく粉になって土となったものの比率が高い。そのためにオクフェンの葡萄畑はより広がりや幅のある味わいとなり、花の香りがあり、酸が豊富になるために甘口に仕上げる。