生産者情報

ダーム ド サッラシDames de Sarrasi

冷涼な気候と石灰質土壌がもたらす酸と、複数品種のブレンドがもたらすハーモニー

驚くべき品質のガイヤックの知られざるワイン

 

ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ
ダーム ド サッラシ

生産者情報

フランス
地域 シュッド ウェスト
歴史

1985年 ブルーノが家族の畑を引き継ぎ、「ドメーヌ サン タンドレ」を設立

     その後、徐々に規模を広げていく中で、ワイナリー名を家族の名前にちなんだ

     「シャトー モントル」に改名し、様々なテロワールのワインを生産。

2018年 マリー(ブルーノの娘)がワイナリーに参加

2022年 ワイナリー名を「ダーム ド サッラシ」に改名

2024年 マリーがワイナリーを引き継ぐ

オーナー

マリー モントル

葡萄園

15ha

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ダーム ド サッラシは、フランス南西地方ガイヤックのスエル村にある家族経営の生産者です。自然との共存に重点を置きつつ、品質重視のワイン造りを行っています。1985年、ブルーノ モントルが家族の畑を一部引き継ぎ、「ドメーヌ サン タンドレ(Domaine Saint Andre)」を設立し、ワインの生産を始めました。その後、徐々に規模を広げていく中で、ワイナリー名を家族の名前にちなんだ「シャトー モントル(Château Montels)」に変え、様々なテロワールのワインを生産するようになりました。2018年末に国外(アメリカ、イタリア、ニュージーランド)やコルビエールで経験を積んだブルーノの娘、マリーがドメーヌに戻り、ワイン造りに参加するようになりました。マリーは、「シャトー」という重みのある名前が自分たちの日常生活に馴染まないと考え、2022年に現在の「ダーム ド サッラシ(Dames de Sarrasi)」に変更しました。「ダーム」は女性たち、「サッラシ」はモントル家の祖先が住んでいた土地の名前です。現在のワイナリーの繁栄には、祖先の女性たちの畑に対する功績が欠かせなかったことから、彼女たちへの敬意を込めて名付けました。現在はブルーノと娘のマリーが主な作業を行なっていますが、2024年夏にブルーノが引退するため、今後はマリーが牽引することになります。

 

 

生物多様性を保った豊かな自然に囲まれた畑

畑は標高300mの石灰岩の台地、コルドーシュルーシエルに位置し、隣接する4つの村に分かれています。4つの村は5km圏内にあり、豊かな自然に囲まれています。畑面積は15ha、有機栽培を行っています。ワイナリーがあるスエルはガイヤックのアペラシオンの中でも最も白亜(チョーク)を豊富に含む土壌のひとつで、酸を保つことができ、暑い年でもワインにフレッシュさを与えてくれます。アマラン(Amarens)、フローセイユ(Frausseilles)、スエル(Souel)の一部はセルー(Cérou)渓谷からの冷たい霧が出る急斜面の谷に隔てられており、この斜面の葡萄は8月中旬の朝霧の恩恵を受けるため気温が下がることから、白ワインの生産に適しています。一方、ヴェール(Vère)渓谷側に位置するスエルの一部とドナザック(Donnazac)は日照が良く、粘土質が多い土壌のため、赤ワインの生産に適しています。

 

ダーム ド サッラシでは、畑の周辺に生物多様性が豊かな環境があることが非常に重要であると考え、様々な取り組みを行っています。畑の区画の大部分は生け垣や林に囲まれており、森や草原に隣接しています。こうした環境が、鳥や昆虫の大切な生息地となっています。特に近年続いている暑く乾燥した夏の間、生け垣は鳥たちのシェルターになります。区画の端に草地を残すこと、何も植えていないスペースを残しておくこと、畝の間に交互に草を生やすこと、これらはすべて、近くに巣を作る鳥や野生のミツバチの生育のために必要なことです。カヴァークロップにはもちろん実用的な意味もあり、これらをすき込むことで土壌流出を防ぎ、土壌に窒素(栄養)を与えることができます。

また、様々な種類の植物を植えることは生物多様性を保つのに必要だと考えており、2019年より畑の周辺に様々な樹木や低木(コナラ、セイヨウヒイラギガシ、コブカエデ、ヘーゼルナッツ、スピノサスモモ、テイハイノバラ、エゾウワズミザクラ、エルダーフラワーなど)約800本を植樹しました。ブルーノとマリーは、日々の天候、畑の注意深い観察が重要だと考えています。剪定から収穫まで、年間を通じて畑の仕事はすべて手作業で行っています。カビなどの病害を防ぐために葡萄樹の風通しを良くする必要があります。そのため、剪定作業を厳しく行い、不要な枝や葉を落とし、密集した房をカットして対策しています。手がかかるから畑だからこそ、正確かつ厳しい選別、病害を防ぐためには手作業が不可欠だと考えています。「自然は素晴らしいものを与える一方で、試練も与える。ヴィンテージはワインのクオリティに大きく影響します。私たちは、それを受け止めてワインを造っています」とマリーは話してくれました。

 

 

醸造について

ワイナリーは、マリーの祖父母が住んでいた建物を1981年にリノベーションして建てられました。グラヴィティ―フローシステムを採用しているため、天井が高くなっています。ボトリングマシンなどの機材は近隣のワイナリーと共同で使用しています。その理由は、外部に依頼するよりも作業を行いたい時にすぐ動けるからです。葡萄は畑で選別しながら収穫した後、セラーでさらに選別され、最も良い品質のものだけが使用されます。またプレスの際にも果汁が選別されます。醸造では人的介入の少ない方法を心がけています。「すべてのワインは野生酵母で発酵させています。選別酵母は使用せず、補糖や補酸は行なわず、タンニンの調整もしません。私たちのワインはヴィンテージやテロワールを表現したものであって欲しいからです」とマリーは話してくれました。野生酵母での発酵は温度管理が重要となるため、すべてのステンレスタンクに冷却装置がついています。また、赤ワインの発酵に使うステンレスタンクは、白ワイン用と比べると、平べったく横に広がりがある形となっています。これは、果皮浸漬を効率的に行うためです。ダーム ド サッラシのワインを特徴づける工程のひとつが、品種別に発酵させ、発酵の途中でブレンドするというものです。「これはこの地域で一般的な手法ではなく、私の父が考えたものです。こうした方が、ワインにハーモニーが生まれると考えています」とマリーは話します。マセレーションはヴィンテージによって異なりますが、10日~1ヶ月ほどです。赤ワイン用のプレス機は、圧力が低い真空式のものを使用しています。これにより、青さのあるタンニンの抽出を避けることができます。プレス後のモストはそれぞれ選別し、複数ロットに分けます。このような造り分けは、赤ワインだけではなく、白ワインでも同様です。

 

ヴィンテージや、求めているワインのキャラクターに合わせて樽のトースト具合を選びます。ブレンドの際も、コンクリートタンク、樽など、どのタイプの容器で熟成させたワインを使うかを選別しています。ダーム ド サッラシでは、オリジナリティを出すためには熟成とブレンドが最も重要だと考えています。「分析値ではなく、葡萄を食べて、実際の味わいで収穫のタイミングを決めています。セラーでの仕事についても基本的には私と父の2人で行いますが、最終的なブレンドの時のみ、エノロジストを呼んでアドバイスをもらっています。これは第三者の意見も重要だと考えているためですが、エノロジストにこうした方がいいと言われても、自分たちの個性と独立性を大切にするため、助言に従わないこともあります。マロラクティック発酵している時と成長した時とではワインの味わいは異なりますので、ブレンドの作業はほぼ年間を通して行っています。ベースのブレンドを決めた後、いくつものブレンドを試して決めていきます」とマリーは話していました。

 

私たちの看板となるキュヴェはレスプリ テロワールです。トップ キュヴェのル セクレ ド サンタンドレ、上級キュヴェのフォンタニーユやレ トロワ シェーヌは、ヴィンテージによっては生産していません。そのため、上級キュヴェが造れないヴィンテージには、看板であるレスプリ テロワールを良いものにするため、さらに厳しく選別を行っています。経済的なことを考えると上級キュヴェを多く造った方が良いのですが、お客様が求めているレベルを常に提供したいと考えているため、厳しい基準を設けています。納得できなければ造らない、というのが私たちのこだわりです。難しいヴィンテージにいまいちなレスプリ テロワールを造るよりも、常に素晴らしいレスプリ テロワールがあるようにしたいと考えています」 

 

ダーム ド サッラシ

左写真は、2024年5月に訪問したスエルの畑の様子です。白葡萄はモーザック、ソーヴィニヨン ブラン、ミュスカデル、ロワン ド ルイユ、黒葡萄はデュラス、ブローコルが植えられています。表土には石灰岩が散らばる様子が確認できます。冷涼な地域で冬は平均気温5~7度程度ですが、夏場は白い石灰岩があるため35度程度にまで上がります。畑の区画の大部分は生け垣や林に囲まれており、森や草原に隣接しています。実際に車を走らせてみると、森の中を抜けて畑に辿り着くこともありました。

ダーム ド サッラシ

右写真は、赤ワイン用の葡萄畑です。スエルとドナザックの村の境界線上に位置しています。写真の葡萄はブローコルで、奥にプリュヌラールや若いシラーが植えられています。こちらの畑は粘土が多く、黒葡萄の栽培に適しています。同じスエルに位置していますが、先ほどの畑よりも夏が少し暖かいため、葡萄が良く熟すそうです。「ブローコルは緊張感があり、熟成させると森を思わせるアロマが出てきます。また、十分に熟していない場合、ヴェジタルになってしまうため、完熟した葡萄を使用するようにしています。だから私たちのブローコルのワインは、ボディや果実味がしっかりと出ています。時々、いくつかの区画で少し早く収穫し、完熟させたものとどのような違いがあるのか比較して確かめています。また、このような作業をするからこそ、手摘みが重要といえます」とマリーは話してくれました。