世代交代によって進化を遂げた、AOCフロントンの注目すべき生産者
国 | フランス |
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地域 | シュッド ウェスト |
歴史 | 1974年 兄弟の祖父がセラーと畑を購入。葡萄はフロントンの協同組合に売っていた。 1980年代 ジャン-リュック リブとフレデリック リブの兄弟がドメーヌを設立。 共同組合を離れ、元詰めワインに注力する。 1988年 フレデリックとカトリーヌが正式にドメーヌに加わる。 アンヌ、グレゴワールがドメーヌを引き継ぐ。 |
オーナー | アンヌ 醸造担当。フレデリックとカトリーヌの娘。 グレゴワール 栽培担当。ジャン-リュックとフレデリックの甥。
<その他メンバー> ジャン-リュック 設立者。1981年に家族の土地を相続。現在は一線を退く。 フレデリック ジャン-リュックの兄。アンヌの父。1988年に参加。 カトリーヌ フレデリックの妻。アンヌの母。1988年に夫とともに参加。 |
葡萄園 | 38ha 年間生産量:約15万本 |
栽培 | AB認証(Agriculture Biologique)を取得。2022ヴィンテージよりラベルに表示。 畑の畝と畝の間には草を生やす。冬の間は、飼育している50頭の羊を畑に放し、羊に草を食べてもらうことで、科学的な除草剤を使用せずにカバークロップの量をコントロールしている。 |
<情報リンク>
リブ家の兄弟が立ち上げたワイナリー
ドメーヌ ル ロックは、南西地方のAOCフロントンの中心、ガロンヌ川とタルン川の間に位置する家族経営のドメーヌです。この土地の土着品種ネグレットを中心に、個性的なワインを手掛けています。38haの畑を所有し、年間約15万本のワインを生産しています。ドメーヌは1980年代にジャン-リュック リブとフレデリック リブの兄弟によって設立されました。1974年に兄弟の祖父がセラーと畑を購入しましたが、彼らの父親の時代まではフロントンの協同組合に葡萄を売っていました。兄のジャン-リュックは父と一緒に畑で働いていました。フレデリックが醸造学の勉強を終えて大学を卒業し、フロントンのいくつかのワイナリーで働いた後、兄弟は、協同組合を離れて自分達のドメーヌを設立することを決意しました。初めて二人が造ったワインのファーストリリースは1986年です。それから30年以上にわたり、ジャン-リュック、そしてフレデリックと彼の妻カトリーヌを中心にずっと家族経営でワイン造りを行ってきました。数年前からは、フレデリックとカトリーヌの末娘のアンヌ、ジャン-リュックとフレデリックの甥のグレゴワールが加入しました。ジャン-リュックは引退し、ドメーヌはフレデリックとカトリーヌ、アンヌ、グレゴワールが共同で経営しています。
新たな世代、アンヌとグレゴワールの活躍
弊社では、ドメーヌ ル ロック(当時はシャトー ル ロック)のワインを、1999年~2005年にかけて輸入していました。ジャン-リュックが手掛けていた頃のワインは濃密で力強いスタイルで、その当時も高品質ではあったものの、やはり知名度の低さからなかなか定着せず、残念ながら継続を断念しました。それから数十年が経ち、彼らのワインをもう一度取り扱うことは出来ないだろうかとコンタクトをとりました。当時、18haだった畑面積は2倍以上、38haにも広がり、新たなラインナップが増えていたこと、また新たな世代であるアンヌとグレゴワールが活躍していることを知りました。そこで、彼らのこだわりのワインをテイスティングし、もう一度挑戦する価値があると判断しました。栽培を担当するグレゴワール、醸造を担当するアンヌという新たな世代が入ったことで、ジャン-リュック時代のパワフルなスタイルとは異なり、より現代的でソフトな質感、味わい深さが感じられるスタイルに変化しています。
「父の時代からの変化についてはたくさんの理由がありますが、一番はやはり気候変動が挙げられます。ワインのアルコール度数は、20年前より1.5%は上がっています。それはつまり、ワインのバランスが変わってしまったということです。父は醸造に関することについて全て教えてくれるので、父とたくさん話をして、毎年新しいことにチャレンジするようにしています。4年前には、葡萄の梗を残して醸造してみたところ、新しい味わいが生まれることが実感できました。今も色々なことを試行錯誤しています」と、アンヌは話してくれました。
「畑で多くの仕事をすることが、私たちの哲学です」
1981年からオーガニックに近い栽培を行ってきました。2022ヴィンテージから公的認証(AB)がつくようになります。「父や叔父の時代は非常に多くの書類や時間が必要となることから、認証取得について特に申請していませんでした」。畑の畝と畝の間には草を生やしています。冬の間は、飼育している50頭の羊を畑に放しています。羊に草を食べてもらうことで、科学的な除草剤を使用せずに自然なやり方でカバークロップの量をコントロールしています。「この羊の放牧については、同じエリアの他の生産者がやっていないことで、私たち独自の取り組みです。私たちの哲学は設立当初から何も変わっていません。生き物すべてを尊重し、自然環境に配慮したワイン造りを目指しています。この土地は自分達だけのものではなく、より良い自然環境を保ちつつ、次世代に引き継いでいくべきだと考えています。畑では出来るだけ多くの手をかけ、反対にセラーではなるべく介入しません」とアンヌは話します。
日々の作業は年によって異なります。雨が多い年は、夏の間に房の周りの葉を落とし、葡萄が乾くようにしています。一方、暑い年は逆に葉を残して、強い日照や熱さから葡萄を守るようにしています。フロントンでしか主に栽培されていない葡萄品種、ネグレットをメインに、シラーやカベルネ ソーヴィニヨンからのワインを造っています。多くは赤ワインで、少しのロゼワインとロゼのスパークリングワイン(ペット ナット)、そして少量の白ワインを造っています。畑は3つのエリアに分かれており、それぞれ土壌タイプが異なっていて3つのテロワールがあります。異なるテロワールから、それぞれの特徴を持ったアロマの異なるワインを造ることができます。自社で栽培している葡萄はすべて自社のワインに使っています。「オーガニック栽培を行なっていることもあり、低収量なので、時にはもっと葡萄があったらいいのにと思うくらいです。そのため、他の生産者に売る葡萄はありません」。
収穫は若い葡萄の区画や特定の区画は手摘み、それ以外は、機械で行います。また、収穫した葡萄はすべて除梗(破砕はしない)します。葡萄は完熟の状態で収穫し、丁寧にセラーに運びます。集約のあるワインにするため、発酵には長い時間(4~5週間)をかけています。また発酵はすべて葡萄の果皮についている天然酵母で行います。赤ワインはすべてコンクリートタンクで発酵させてからプレスしています。発酵・熟成させる数ヶ月の間、それぞれのタンクの温度をチェックして、ワインの状態についてモニタリングしています。このように、醸造では出来る限り介入しないことによって、テロワールがしっかりと表現されると考えています。
フロントンの土着品種ネグレットを主体とする赤とロゼの産地
フロントンは、フランス・南西地方に位置する小規模な生産地域です。土着品種のネグレットを主要とする赤ワイン、ロゼワインがAOCとして認可されています。ガロンヌ川とタルン川に挟まれた場所に広がり、土壌は砂利質で鉄分や石英を多く含んでいます。カオールよりもさらに南側にあり、西にはブランデーで有名なアルマニャックが広がっています。1975年にコート デュ フロントネ AOCとして認定された後、2005年に現在の名称であるフロントン AOCに変更されました。南西地方の中でも知名度は決して高くはありませんが、ドメーヌ ル ロックはこの地で素晴らしいワインを手掛けています。