土壌の異なる2つの葡萄園が生み出す、マレンマらしさを表現したワイン
モレッリーノ ディ スカンサーノの代表的生産者
国 | イタリア |
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地域 | トスカーナ |
歴史 | 200年以上前にモリス家がスペインからマレンマに移住。
1970年 グアルティエーロ ルイジ モリス(ジュリオの祖父)がモレッリーノ ディ スカンサーノにポッジョ ラ モッツァの畑を購入。 1971年 会社組織「モリスファームズ」を設立。モリス家の兄弟姉妹6人がオーナーとなる。 ※6人のオーナーとは、祖父グアルティエーロの6人の子供達。 1978年 モレッリーノ ディ スカンサーノDOCが誕生。 1979年 モリス家の娘、カテリーナと結婚したアドルフォ パレンティーニ(ジュリオの父)が モリスファームズで働き始める。 ※結婚したのは1978年以前 1981年 モレッリーノ ディ スカンサーノ(当時はD.O.C.)の生産を始める。 いち早く生産を始めたパイオニア的存在。 1988年 アドルフォとエノロゴのアッティリオ パーリ(当時24歳)が出会う。 パーリと一緒にサンジョヴェーゼに国際品種をブレンドし、樽熟成させた “アッヴォルトーレ”を生み出す。 初リリースの1988VT。 同じ年からモレッリーノ ディ スカンサーノ リセルヴァも造り始める。 2007年 モレッリーノ ディ スカンサーノがD.O.C.G.へ昇格。 |
オーナー | ジュリオ パレンティーニ ラニエリ ルイジ モリス
ジュリオは、2011年にモリスファームズのCEOとなりました。現在、引退した父のアドルフォ(現会長)からワイナリーを引き継ぎ、従兄弟のラニエリ ルイジ モリスと共に、モリスファームズの運営を担っています。ジュリオ自身はワインメーカーではありませんが、畑、セラー、販売、金銭面などすべてに関わっています。役割分担としては、海外マーケティング、販促活動はジュリオ、従兄弟のラニエリは国内販売、従業員の対応、畑の管理などを担当。二人でなんでも相談し合って決めます。父のアドルフォは2007年に引退しましたが、それから6-7年ほどはコンサルタントとしてワイン造りに関わっていました。今でも必要とあればアドバイスをくれるそうです。 |
葡萄園 | 現在、2つの農園でワイン造りを行なっており、1つがマッサ マリッティマの近くにあるファットリア ポジェッティ(37ha)でアッヴォルトーレとモンテレージョを、もう1つはモレッリーノ ディ スカンサーノにあるポッジョ ラ モッツァ(33ha)でモレッリーノとリセルヴァが造られます。 ファットリア ポジェッティ(マッサ マリッティマ) 粘土質土壌から、力強さ、骨格、しっかりとしたタンニンがもたらされる。カルシウムが豊富という特徴があります。PH7.7の弱アルカリ性で、水はけの良い土壌です。畑の標高は海抜80~100m、畑は南西に面しています。ここではアッヴォルトーレとバルバスピノーサが造られます。
ポッジョ ラ モッツァ(モレッリーノ ディ スカンサーノ) 砂質土壌で、やわらかくエレガントな要素がもたらされます。丘陵地で、標高は海抜100mほどです。土壌はPH6.3と酸性に近く、石、粘土、石灰岩がみられます。同じ畑の中でも、上部、中腹、下部で土壌が大きく異なります。ここではモレッリーノ ディ スカンサーノとリゼルヴァが造られます。モレッリーノ ディ スカンサーノが2007年からD.O.C.G.に格上げされたのは、モリスファームズと他の2つの生産者によるものであろうと、高く評価されています。 |
<情報リンク>
マレンマの美しい自然とともに葡萄を育てる生産者
モリスファームズは、トスカーナ州南西部、マレンマに拠点を置くワイナリーです。現在、ジュリオ パレンティーニと従兄弟のラニエリ ルイジ モリスが中心となって、ワイン造りやワイナリーの運営を行なっています。モリス家は今から200年以上前に、スペインから移住してきました。広大な土地を所有し、代々農業に従事してきた家系です。木炭が主に使用されていた100年前には、その原料となる広大な森を所有しており、その土地は6,000haを超えていたと言います。現在では、木炭生産のための森は売却しており、所有面積は476ha、その内70haが葡萄畑です。畑は、主に2つの葡萄園に位置しており、粘土質土壌が特徴的な「ファットリア ポジェッティ」と、砂質土壌が特徴的な「ポッジョ ラ モッツァ」に分かれています。ファットリア ポジェッティは、モリス家が移住してきた200年前から所有し続けている土地です。
モリス家では昔から、葡萄栽培やワイン造りも行ってはいたものの、事業全体から見れば主な収入源ではありませんでした。1979年、ジュリオの父であるアドルフォがモリスファームズで働くようになり、近代的な改革を推し進め評価を高めた結果、ワイン造りに専念するようになりました。ヒュー ジョンソンの『ポケット ワイン ブック2020』で3ツ星生産者として紹介され、「新しい時代の1級のマレンマの生産者のひとつ。基本のモレッリーノを試すべし」と記載されています。
「常に品質を重視する」 - ワイン造りの哲学 -
モリスファームズにとって一番重要なのは品質です。常に価格以上の品質があることに誇りを持っています。例えば、ファットリア ポジェッティでは、葡萄はすべて一番規定の厳しいDOCマッサ マリッティマの基準に合わせています。スタンダードクラスのマンドリオーロにも、この厳しい基準で栽培された品質の高い葡萄を使っており、価格に対する品質の高さは保証できます。健全で品質の高い葡萄を得るため、畑に最も多くの時間を費やし投資を行っています。風通しが良くなるように、不要な枝や葉を取り除き、また葡萄の房に日光が当たるように房のまわりの葉を取るなど、丁寧に作業を行います。
品質のため改革を行った偉大な父、アドルフォ パレンティーニの功績
モリス家の娘であるカテリーナと結婚したアドルフォ パレンティーニは、1979年からモリスファームズで働くようになりました。アドルフォは当時、まだ無名の産地だったマレンマの土地で、必ず素晴らしいワインが出来ると確信し、様々な改革や投資を行いました。そして、質より量を重視した従来のワイン造りから、品質重視のワイン造りへと方向転換を図りました。アドルフォが最初にワインを造り始めたころは、多くの苦労がありました。最初は独学でワイン造りをしていた為、品質が安定せず、良いワインが出来る年もあれば、良くない年もありました。
しかし、1988年、当時まだ24歳だったアッティリオ パーリをコンサルタントに迎えたことが転機となり、よい影響をもたらしました。その当時では馬鹿げていると言われたグリーンハーヴェストを行ったり、シラーを植えることを薦めたりと、様々なアイディアをくれました。そして、アドルフォとパーリよって、スーパートスカーナ スタイルのフラッグシップ「アッヴォルトーレ」が生み出されました。新しい醸造技術によって、白はフレッシュでクリーンな味わいのものが出来るようになるなど、ワインの品質は目覚ましく向上しました。
モリスファームズは代々続く家族経営のワイナリーですが、モリス家だけでなく、ワイナリーの従業員もまた代々、同じ家族がモリスファームズで働いてくれています。そして自分たちが関わったワインが世界的に高い評価を受けていることを、とても誇りに思っています。
土壌の異なる2つの葡萄園「ファットリア ポジェッティ」と「ポッジョ ラ モッツァ」
モリスファームズは2つの葡萄園を所有しています。どちらもトスカーナ州の南西部マレンマに位置し、ティレニア海に面しています。すぐ北はボルゲリ、またブルネッロ ディ モンタルチーノ、キアンティといったトスカーナを代表する産地に囲まれています。近年、マレンマのワインの品質は向上し、他のトスカーナのワインに勝るとも劣らない品質を誇っています。トスカーナの他のエリアのサンジョヴェーゼと比べ、マレンマのサンジョヴェーゼの特徴は、海に面しており温暖な気候に恵まれているおかげで、葡萄がよく熟し、柔らかく、ソフトな味わいになることです。
所有する2つの葡萄園のうち、ひとつはマッサ マリッティマDOC地区にある「ファットリア ポジェッティ(Fattoria Poggetti)」、もうひとつがモレッリーノ ディ スカンサーノDOCG地区にある「ポッジョ ラ モッツァ(Poggio La Mozza)」です。
「ファットリア ポジェッティ」は、化石の多い粘土質土壌でわずかに酸性です。出来上がるワインは骨格のあるパワフルなタンニンが特徴となります。フラッグシップのアッヴォルトーレやバルバスピノーサ等を生産します。それに対し、「ポッジョ ラ モッツァ」は砂質土壌で、こちらもわずかに酸性です。この土壌からは、エレガントで甘くやわらかいタンニンがもたらされます。モレッリーノ ディ スカンサーノを生産します。
モレッリーノ ディ スカンサーノのトップ生産者の地位を確立
先代のアドルフォによる様々な改革がワインの品質の向上に繋がり、マレンマで優れたワインを造る生産者として「モリスファームズ」の名が知られるようになりました。こうしたモリスファームズの活躍が、それまでキアンティ クラシコやモンタルチーノのワインと比べると、質が落ち、地元で消費される日常用のワインとして捉えられていたモレッリーノ ディ スカンサーノが2007年にD.O.C.G.に格上げされるきっかけになったと言われています。その後は彼らの躍進は止まることなく、近年ではヒュー ジョンソンの「ポケット ワイン ブック2024」で3ツ星生産者として紹介され、「新しい時代の1級のマレンマの生産者のひとつ」と記載され、「デカンター 2023.04」に掲載されたモレッリーノ ディ スカンサーノの特集記事では、『モレッリーノ ディ スカンサーノの知るべき4軒の生産者』のひとつとしてモリスファームズが紹介されています。また、「ヴィノス」では、アントニオ ガローニがモリスファームズについて以下のようにコメントしていることからも、モリスファームズがモレッリーノ ディ スカンサーノを代表する生産者のひとりとして、その地位を確立していることが伺えます。
「モリスファームズからの見事なワインのひと揃いだ。モレッリーノは依然としてものすごいバリューで、フラッグシップとなるアッヴォルトーレはこのスタイルの同じグループの中でも最良のものの一つだ。モリスファームズのワインは多くの理由で注目せずにはいられないが、私が最も賞賛している点は、重すぎることなく、深みのある力強い味わいを提供できることだ」
―『Vinous 2018.4』でのアントニオ ガッローニのコメントより
<父アドルフォと息子ジュリオ>(2007年訪問時)
モリスファームズが現在のようにワイン造りを主力にするようになったのは、モリス家の娘、カテリーナ モリス(ジュリオの母)と結婚したアドルフォ パレンティーニ(写真左。ジュリオの父)が1979年にモリスファームズに関わるようになってからのことです。
アドルフォはまだ無名の産地だったマレンマの可能性を信じ、この場所で品質の高いワインを造りたいと考えました。それまでは「質」よりも「量」のワイン造りいましたが、品質重視のワイン造りへと方向転換をしました。すでに名声を高めていた近くのボルゲリのように、品質の高いワインを造ることでモリスファームズのブランド化を図ったのです。
当時は、ワインメーカーがおらず、アドルフォは独学でワイン造りを行っていました。そのため、ヴィンテージによって品質のばらつきがあり、良い年もあれば出来の悪い年もありました。しかし、1988年にコンサルタントのアッティリオ パーリ※を迎えたことが、モリスファームズにとって転機となります。パーリの助言によりグリーンハーヴェストや新しい醸造技術の導入、当時まだ珍しかったフレンチオーク樽での熟成など様々な改革を行われ、これがワイン造りに良い影響をもたらしました。毎年安定した良いワインが出来るようになっただけでなく、アドルフォとパーリはスーパータスカン「アッヴォルトーレ」を生み出しました。
※アッティリオ パーリは、ヴェレノージのコンサルタントも担当するイタリアを代表するエノロゴ。
<収穫の時期を話し合う父の写真>
こちらの写真は、ジュリオが一番気に入っているものです。ちょうど、収穫の直前の時期に、父アドルフォとアグロノミスト(栽培専門家)がセラーのタンクの前で、様々な考えを巡らせている時の様子です。どの区画の葡萄をいつ収穫すべきか、天候はどうなるだろう?など、完璧なタイミングで葡萄を収穫するために、ワイン醸造家はあらゆることを考えなければなりません。現在、アドルフォはすでに引退していますが、ジュリオはこの写真を見て、「父の姿を懐かしく思い出す」と言います。収穫期はワインの生産者にとって1年で最も重要な時期であり、毎日、難しい決断を瞬時に迫られるという、非常に神経を使う時期でもあります。ジュリオは2017年に来日した際、「私は父がやっていたワイン造りの仕事を引き継いでみて、この仕事がどれだけ大変なのか、父の苦労を身に染みて感じています。」と話していました。