【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)1997年訪問時に撮影したディディエ ピク。輸入開始は1985年。

 

 初めての輸出先は日本

「ピクのワインが専門家だけのものになっているのは、シャブリのグラン クリュの斜面を所有していないからなのだろうか?」――こう投げかけるのは、最も著名なワイン評価誌『ワイン アドヴォケイト』の現編集長を務め、メインレビュアーのひとりとしても活躍するウィリアム ケリーです。彼はこう続けます。「理由が何であれ、それは彼のワインの品質とは何の関係もないことは明白であり、そのワインは深みとディテール、力強さと純粋さの調和においてこの地域で最高のワインの一つに数えられる。心からおすすめのワイナリーだ」。

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)2024年訪問時に撮影したディディエ ピク。稲葉とは40年の付き合いになる。

 

 

 

ロバート パーカーが「ワイン アドヴォケイト」を発刊したのは1978年で、1984年には弁護士を辞めてワイン評論に専念するようになりました。まさにその創世期にあたる頃、1985年にピクのシャブリが初めて輸出された先が日本で、次がアメリカだったそうです。2024年の訪問時にはディディエ ピクが自ら「ちょうど40年くらいになるんじゃないか。たしか稲葉が初めての輸出先だったな」と懐かしそうに話してくれました。日本市場のためだけに、樽熟成を行なった特別なキュヴェを生産してくれたこともあります。今から20年ほど前に、弊社社長の稲葉が記したコメントがありましたので、以下に簡単にご紹介いたします。

 

 

 

 

「著名な畑をもっていませんので、ロバート パーカー等の評論家には知られていませんが、『クラスマン』(※)や『ギド アシェット』などに掲載され高い評価を得ています。フランス国内では特によく知られており、ジャン マリー ラヴノーやルネ エ ヴァンサン ドーヴィサらと同格にみなす人すらいます」、「初めてこのドメーヌへ行ったときの感動は忘れがたいものです。私たちは、このドメーヌを訪れて初めて、品質のよいシャブリがいかに長くいい状態を保ち続けるか、身をもって知らされました」。

(※)現在の『ベタンヌ+ドゥソーヴ』

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)「シャブリ ヴィエイユ ヴィーニュ エレヴェ アン フュ ド シェーヌ(日本限定品/終売)」の1988VT。

36年の熟成を経てもなおフレッシュさを残しながら、コーヒーのような複雑な香りも獲得していた。

 

 

 

 ステンレスタンク熟成のシャブリの完成形

シャブリの二大ドメーヌであるフランソワ ラヴノーとヴァンサン ドーヴィサに次ぐ生産者、「ジャン ポール エ ブノワ ドロワン」のワイナリーから車で約6分ほど行くと、シシェ村のジルベール ピク エ セ フィスに辿り着きました。さっそくディディエが出迎えてくれます。2024年は、畑やセラーの見学はせず、試飲を中心に行いました。もちろん、40年の積み重ねで、すでに見学済みです。とはいえ、それでは少々さみしいので、2019年に訪問した時の写真をご紹介します。

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)アン ヴォデコルスの畑の粘土石灰質土壌

 

 

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)ドゥシュ ラ キャリエールの畑。

 

 

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)プルミエ クリュ ヴォークパンの畑。急斜面であることが良く分かる。

 

 

 

ピクのシャブリの特徴は、発酵、熟成をステンレスタンクのみで行うことです。先ほどお伝えしましたが、実は一時的に日本市場のためだけに、樽を使ったキュヴェを生産していました。しかし、「私たちが造るシャブリのテロワールを表現するためには樽熟成は必要ない」と判断し、結果として、ステンレスタンク100%での醸造に力を注ぐことになりました。また、2006年からは野生酵母で発酵させています。野生酵母のみの発酵は、葡萄が100%健全でなければなりません。そのため、畑とセラーで厳しい選別を行っています。

 

 

 

熟成期間はヴィンテージによって異なりますが、澱と共に最低でも12ヶ月熟成させています。また、キュヴェによっては18ヶ月程度の熟成を行うこともあります。例えば、ドシュ ラ キャリエールの2022VTは2024年3月に瓶詰めしており、17~18ヶ月程度の熟成を行なうことで、葡萄が持つポテンシャルを引き出しています。また冬の間、セラーの扉を開けて冷たい外気を入れ、数日間かけてゆっくりとタンクを冷却し、酒石を落とします。短時間で急激に冷却して酒石を落とすより、ワインに与える影響は大幅に少なくなります。ピクのシャブリに感じるまったく無駄のない均整のとれた美しさは、葡萄の品質の高さと、このような時間をかけた丁寧な造りにあるのです。

 

 

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)ステンレスタンクといっても様々。

 

 

 

さて、冒頭では『ワイン アドヴォケイト』の現編集長、ウィリアム ケリーの絶賛の声を掲載しましたが、もちろん他の専門家にも高く評価されています。一例をご紹介します。

 

 

 

 

「シシェに居を構える、きわめて優れた小さなドメーヌ」

――『ブルゴーニュワイン大全』ジャスパー モリスMW

 

 

▶「ディディエ ピクのこのコレクションには本当に感銘を受けた。(中略)特に、村名キュヴェのいくつかは信じられないほど美味しい」

――ヴィノス2020.7』アントニオ ガッローニ

 

 

「私がしばしばシャブリで最も価値のあるワインのひとつと評してきた(そして私自身の買い物リストにも定期的に入る)これらのワインが、最も謙虚で実直、愛想がよく熱心な(しかも誇張表現には無頓着な)葡萄栽培者のひとりだと私が認識するようになった人物によって栽培され、醸造されていることは、おそらく偶然ではないだろう」

――『ワイン アドヴォケイト2013.8.29』デイヴィッド シルトクネヒト

 

 

 

 「2022VTのピクは凄い」と心から感動しました!

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)2023年訪問時に撮影。必要なタンクから少量ずつをカラフェに移して、即席のノーマル シャブリをブレンド。

試飲の前に、必ず全員のグラスをリンスしてくれる。

 

 

さて、少しややこしいのですが、2024年の訪問時に試飲したのは2023VT、2023年の訪問時に試飲したのは2022VTです。そのため、今回の訪問レポートでは2023VTをご紹介すべきなのですが、ピクのシャブリはステンレスタンクで長期間熟成させてから出荷されるため、まだ日本には出荷されていません。そこで、現在販売中の2022VTについてお伝えいたします。まず、私の意見を述べさせていただきますが、"ピクの2022VTは買い"です! 他のヴィンテージももちろん素晴らしいのですが、特にこの2022VTを試飲した時、そのあまりの美味しさに驚きました。

 

 

 

必要なタンクを歩いて回って少しずつカラフェに取り出し、即席でノーマル シャブリをブレンドしてくれたのですが、そのあまりにも完成された風味に思わず笑ってしまうほど。何気ない所作で完璧な仕事をする職人技には、これが達人か……と感動せずにはいられませんでした。また、全員のグラスを慣れた手つきで、しかし丁寧にリンスしてからワインを注ぐ様子も、品質への妥協のなさが見える瞬間でした。

 

 

それでは最後に、2022VTについてのディディエのコメントを掲載します。「2022VTをひとことで言うなら、"美しいヴィンテージ"だ。質、量ともに素晴らしい年になった。収穫時期も早く、たとえばアン ヴォデコルスは9月2日に収穫した。これまでで最も早かったのは8月28日だったから、いかに早く葡萄が熟したか分かるだろう」。2022VTは暖かいヴィンテージですが、ピクのシャブリにおいては全く問題はありません。酸とミネラル、そしてピュアで美しいフルーツの味わいのバランスに、これぞシャブリ! と感じていただけるのではないかと思います。

 

 

さて、2024年版「フランス現地視察レポート」も、今回が最後となりました。実際に現地を訪問し、感じたことをお伝えしてきましたが、本当に様々な地域で、その土地ならではのワインが造られていると実感します。また、1本のボトルの先には、必ず造り手がいるのだということも大切なことだと思います。弊社の仕事は、ただワインを販売することではありません。ワインをご紹介することで、造り手の想いや哲学を多くの人にお伝えするという、いわば橋渡しこそが"稲葉らしさ"なのではないかと思います。今後も、美味しいワインを探し出し、皆様にその素晴らしさをお伝えし続けます。それから、40年以上積み重ねてきた信頼関係を保ちながら、これから先の未来にも、ディディエ ピクのシャブリをつないでいきたいと思います。

 

 

株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治

 

 

【現地視察レポート】40年をともに歩んできたシャブリのトップ ドメーヌ、 "ジルベール ピク エ セ フィス"(経営企画室 藤野晃治)

 

 

■ラインナップ

・シャブリ 【白・辛口】

・シャブリ ヴォークレール 【白・辛口】

・シャブリ アン ヴォデコルス 【白・辛口】

・シャブリ ドゥシュ ラ キャリエール 【白・辛口】

・シャブリ ヴィエイユ ヴィーニュ 【白・辛口】

・シャブリ プルミエ クリュ ヴォグロ 【白・辛口】

・シャブリ プルミエ クリュ ヴォークパン 【白・辛口】

 

ジルベール ピク エ セ フィスの情報(生産者詳細)はコチラから!

 

 

★今回で2024年フランス現地視察編は終了です。お読みいただきありがとうございました。

 

 

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