【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)

シトリー ル フォール村の美しい景観(写真はドメーヌ コルボワのホームページより引用)

 

 

 中世ヨーロッパの農村を訪ねて

ドメーヌ デュ コロンビエのワイナリーがあるフォントネ プレ シャブリから車で20分。シトリー ル フォールは、シャブリとオーセールを結ぶ中間地点にある、中世の面影を残した人口わずか300人の小さな村です。シャブリからは12km ほど南西に位置しています。非常に古くからワイン造りが行われていた歴史的な村で、1993 年にAOCブルゴーニュに地域名を付記したAOC「ブルゴーニュ シトリー」が認められました。ブルゴーニュワインの権威として知られるジャスパー モリスMWは名著『ブルゴーニュワイン大全』の中で、「小さなシトリの村は時間の流れに取り残されたような感がある。シャブリからサン=ブリに向かう途中になければ、私も訪れることがなかったかもしれない」と書いています。

 

 

 

この村で20世紀初頭に創業した家族経営のワイナリー「ドメーヌ コルボワ」を訪ねました。ブルゴーニュにおいて、まるで忘れ去られたかのように隠れた産地ではありますが、実際にはとても素晴らしいワインが生み出されているのだと実感させてくれる生産者です。2023年に初めて訪問しましたが、2年連続で訪れたシトリー ル フォールの村の景色はやはり美しいものでした。中世ヨーロッパの農村を想像してみれば、おそらくそこに描かれた景色は、この村にぴったりと当てはまるのではないかと思います。まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのようでした。

 

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)オーナーのバンジャマンとカリーヌ。2年連続の訪問も快く受け入れてくれた。

 

 

ワイナリーに到着すると、さっそくバンジャマンとカリーヌが出迎えてくれました。コルボワ家は4世代にわたり葡萄栽培を行ってきた一族です。バンジャマンの父、ミシェルは1970年まで両親と共にワイン造りを行っていましたが、2haの畑を引き継いで独立しました。その後、徐々に葡萄畑を取得し、規模を拡大していきました。ドメーヌ ミシェル コルボワとしてワイナリーが設立されたのは1988年のことです。バンジャマンは2001年に参加し、2009年に経営に加わりました。

 

 

自社畑の面積は現在20haと、設立当初の10倍に及びます。その内訳は、シトリー ル フォールに13ha(シャルドネ 4.1ha、アリゴテ 4.6ha、ピノ ノワール4.6ha)、シャブリに6.7ha(ヴィラージュ シャブリ5.6ha、プルミエ クリュ1.1ha)。生産可能本数は 10 万本ほどと、ブルゴーニュの家族経営の生産者としては十分な規模となっています。ちなみにバンジャマンによるとAOC ブルゴーニュ シトリーの栽培面積は合計で77.71haとのこと(※ブルゴーニュワイン委員会の公式サイトでは61.77ha)。非常に小さなアペラシオンであることが良く分かります。

 

 

昨今、ブルゴーニュのワインは価格高騰が著しく、エントリークラスのワインでさえも、気軽に飲むことができなくなってしまいました。輸入元としては大変心苦しい状況ではありますが、それでも価値があると信じる生産者のワインを選んでご紹介しております。とはいえ、やはりブルゴーニュのワインをもっと多くの方に楽しんでいただきたいと考え、新たに生産者を探すことにも力を入れてきました。その結果として、クレマン ド ブルゴーニュのクロード ゲラエールや、オート コート ド ボーヌのシャルル ペール エ フィーユ、コート ドーセールのドメーヌ サン パンクラス、マコネのダヴィド ビアンフェなど、本当に素晴らしい生産者たちのワインを日本のお客様にご紹介することができました。

 

 

そしてもちろん、今回のドメーヌ コルボワもまた素晴らしいブルゴーニュのワインでありながら、多くのお客様にお届けできるコストパフォーマンスの高さを誇る生産者なのです。その理由のひとつが、自社畑が広いこと。生産できるワインの数が多くなれば、その分価格を下げることができます。とはいっても、ブルゴーニュやシャブリ、そしてシャブリの近郊エリアは霜害や雹害を受けやすく、収穫量が激減してしまうこともしばしば。より温暖で安定的に葡萄が収穫できるエリアと比べると安くはないかもしれませんが、たとえばブルゴーニュ アリゴテは2,900円、ブルゴーニュ シトリー ブランは3,300円、ブルゴーニュ ルージュ ロンブル ダーヌは3,200円と、昨今のブルゴーニュを考えると、本当に魅力的な価格といえるのではないでしょうか

※2025年2月21日現在。商品価格は変更となる場合がございます。

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)ワイナリー。昔は名産品であるチェリー(Cerisiers)の栽培がメインだったため、「Domaine des Cerisiers」の文字が残る。

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)バンジャマンの父、ミシェルが大量のチェリーで歓迎してくれた。さすがは名産品と舌鼓を打つおいしさ!

 

 

 

 シトリーとシャブリ

シャブリ近郊エリアといえるシトリー ル フォールのワインにはシャブリとの共通項がありますが、もちろん違いもあります。バンジャマンが次のように説明してくれました。「シトリーとシャブリは近いので、ワインの味わいも似てくる。シトリーの土壌はシャブリと同様に粘土と石灰で、アンモナイトの化石も出る。それぞれのワインを比べると、シトリーはフルーツの方が、シャブリはミネラルの方が強いといえるだろう。どちらの場合も、2年ほど待つとさらに良くなるよ」。

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)

畑から出土した巨大なアンモナイトの化石。この地域ではそれほど珍しくないためか、傘立てに使われている。

 

 

 

続いて、ヴィンテージについても聞いてみました。

 

2024VT:去年の10 月からずっと雨が続いている。葡萄の生育シーズンの初めの時期は霜や雹など色々な問題が起

きるので、日が出てくれるのを心待ちにしている。シャブリの畑で霜害があり、VV の畑で50%ほどダメージを受

けた。気温はマイナス1.5 度程度だったが、雨が降ってしまったため、それで霜が降りた。

 

2023VT:とても暑く乾燥したヴィンテージ。今年と同じように年の初めは雨が多かったが、7~8 月の収穫前の大事

な時期は乾燥していた。2022VT、2023VT はどちらも暖かいヴィンテージで似ている。特に赤ワインにとっても良い

ヴィンテージだった。

 

2022VT:一年中雨が降らず乾燥していた。ワインの味わいを決めるのは、7~8 月の気候。2023VT と同様、この時

期が乾燥していたことで、似た味わいのヴィンテージになった。

 

2021VT本当に難しい年で、霜害や夏の多雨による病害で90%減。 赤ワインは軽やかな仕上がりとなった。

 

2020VT:2022VT 同様に暑い年で、収量が低くなった。白は2023VT と同様に果実味が豊富なので、2~3 年熟成さ

せるとミネラルの要素がしっかりと出るようになる。

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)「ブルゴーニュ シトリー ブラン アルモニ」の畑。樹齢35~40年のシャルドネが植えられている。

 

 

 

「2022VT、2018VTは最大収穫量が得られたが、2019VT、2020VTは40~50%、2017VTは50%、2016VTは95%減と減少続きで、50%前後の減少が平均的になりつつあるよ。オーガニックなので化学的な対策ができない。だから私が最も重要だと考えているのは、"ワインが造れる"ということだ。もちろん、ワインの品質はとても重要だが、気候変動や天候不順などがある中で、まず何よりも葡萄が収穫できること、そしてワインが得られることが大切だと考えているんだ」

 

 

 

 

 シャルドネだけでなく、ピノ ノワールとアリゴテも良いのが嬉しいところ

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)

ワイナリーの中も見学。こちらは赤ワインの発酵用のステンレスタンクで、ポンピングオーバーを自動で行う機能がついている。

 

 

ドメーヌ コルボワでは、「ブルゴーニュ シトリー」のシャルドネとピノ ノワールに加え、「ブルゴーニュ アリゴテ」、「シャブリ」、「シャブリ プルミエ クリュ」から様々なワインを手掛けています。シトリー ル フォールは白ワインの名産地として知られていますが、シャルドネだけでなく、アリゴテからも素晴らしいワインが生み出されます。また、ドメーヌ コルボワは、ピノ ノワールからの赤ワインも秀逸な出来なのが特徴です。2024年の訪問時には、最上級キュヴェの「ブルゴーニュ シトリー ルージュ アルモニ 2022VT」の取り扱いを即決したほど! 

 

 

「ブルゴーニュ シトリー ルージュ アルモニは、レ ダームよりもしっかりとタンニンが感じられる。0.5haしかないため、年間3,000 本しか生産できない。普段はワイナリーに来た個人のお客様用に特別に販売しているんだよ。だから120本しか分けられないが、喜んでいただけてとても嬉しいよ。レ ダームは複数区画のブレンドで、樽で12ヶ月熟成させる。一方、このアルモニは南向きの単一区画で樹齢は65年、樽で12ヶ月熟成させた後、さらにタンクで6ヶ月熟成させている。つまり、最低でも18ヶ月は熟成させているんだ」とバンジャマン。しっかりと熟した赤系の甘い果実の風味に、フレッシュな酸と心地よく軽快なミネラルが感じられる上質なピノ ノワールで、本当に素晴らしい品質だと感じました。実はこのワイン、弊社在庫は残りわずかとなっております。ご興味のある方はお早めにお買い求めください!

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)

「ブルゴーニュ シトリー ルージュ アルモニ 2023VT」の樽試飲。ボトリング済みの2022VT同様、素晴らしいクオリティ!

 

 

 

また、シャブリのクオリティも本当に素晴らしく、特にプルミエ クリュの「コート ド ジュアン」は本当に見事なワインに仕上げられています。実はこちらのワイン、2023年の訪問時に試飲し、その場で取り扱いを即決したといういわくつきの品です。「コート ド ジュアンはモンマンの近くにある畑で、全体で7~8haほど。私たちはその内、約1haを所有している。このワインには樽を使わず、フレッシュさをキープするためにステンレスタンク100%で醸造している。一方、シャブリ ヴィエイユ ヴィーニュには樽を使用しているが、それはよりリッチで丸みのあるスタイルだから。ただし、シャブリの持つ繊細さを保つために12hLの大樽を使用している」。

 

 

また、シトリー ル フォールの畑の葡萄を使った「ブルゴーニュ アリゴテ」もおすすめです。「実は、フランスでもシャルドネと比べると、アリゴテの人気はいまひとつ。良い品質のアリゴテが少ないことや、価格が少し高くても良いからシャルドネを選ぶという方が多い。とても美味しいから残念に思っているんだ」とバンジャマン。弊社社長の稲葉は、「酸とミネラルのバランスが良い。この素晴らしい品質には、樹齢が古いことも関係するのでは?」と大絶賛。これに対し、バンジャマンは「おっしゃる通り。平均樹齢は50年と古く、一部には樹齢65年の葡萄もある。さらに南向きの古い畑で葡萄の粒が小さくなるため、凝縮感のあるワインになる。バランスがとても良く、持続性のある風味でフレッシュな味わいとなる」と返していました。

 

 

 

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)2023年訪問時に撮影した、シトリー ル フォールの小さな展望台にある村の展望図。

肝心の景色が木で隠れているが、そんなところもシトリーらしい。

 

 

 ワインって面白い!

 

【現地視察レポート】シャブリ近郊、中世の面影を残した小さな村。シトリー ル フォールの魅力を表現する生産者 "ドメーヌ コルボワ"(経営企画室 藤野晃治)テイスティングの様子。カウンターにも巨大なアンモナイトの化石が置かれている。

 

 

ブルゴーニュといえば、ロマネ コンティやシャンベルタン、モンラッシェなどの名だたるグラン クリュが綺羅星のように並ぶコート ドールを真っ先に思い浮かべます。本当に素晴らしい生産者やワインが数多くあり、魅力的なエリアです。しかし、今回訪問したドメーヌ コルボワがある「シトリー ル フォール」もまた、ブルゴーニュの面白さを体感できる素晴らしいエリアなのだと自信を持ってお勧めしたいと思います。たとえ有名な産地でなくとも、美味しいワインが造られているということ。いったい、どんなワインが造られているのだろう……? まるで、ワインを飲み始めたばかりの、あの頃を思い出させてくれるような……。「ワインって面白い!」と改めて感じさせてくれる生産者訪問となりました。中世ヨーロッパの雰囲気を残した「シトリー ル フォール」に思いを馳せて、ドメーヌ コルボワのワインをぜひお楽しみください。

 

 

株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治

 

 

■ラインナップ

・ブルゴーニュ アリゴテ 【白・辛口】

・ブルゴーニュ シトリー ブラン 【白・辛口】

・ブルゴーニュ シトリー ブラン アルモニ 【白・辛口】

・ブルゴーニュ ルージュ ロンブル ダーヌ 【赤・フルボディ】

・ブルゴーニュ シトリー ルージュ レ ダーム 【赤・フルボディ】

・ブルゴーニュ シトリー ルージュ アルモニ 【赤・フルボディ】

・シャブリ 【白・辛口】

・シャブリ ヴィエイユ ヴィーニュ 【白・辛口】

・シャブリ プルミエ クリュ コート ド ジュアン 【白・辛口】

 

 

ドメーヌ コルボワの情報(生産者詳細)はコチラから!

 

 

 

★次回は、ブルゴーニュ・シャブリの生産者、「ドメーヌ ジャン ポール エ ブノワ ドロワン」をご紹介します。

 

 

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