【現地視察レポート】オート コート ド ボーヌに注目! 父と娘たちが造る、食事に寄り添うブルゴーニュ。「シャルル ペール エ フィーユ」(経営企画室 藤野晃治)
マリー(妹)とポリーヌ(姉)。現在、主にポリーヌが醸造を担当している。
シャルル家のワイナリー
ボージョレのヴィリエ モルゴン村を出発し、ブルゴーニュのナントゥーという村へと車を走らせます。ナントゥーは、オート コート ド ボーヌというAOCのワインを産出するエリアです。ヴォルネイやポマールのさらに西側に進むと辿り着くことができます。ポマールからはおよそ4.4km、車で約6分ほどの距離です。グラン クリュやプルミエ クリュはありませんが、標高が高く、近年では気候変動の影響から評価が見直されており、専門家から注目を集めている産地でもあります。
今回訪ねる生産者は、2021年に取り扱いを開始した「シャルル ペール エ フィーユ」です。「シャルル家の父と娘たち」というワイナリー名の通り、パスカル シャルルとその娘たちである、ポリーヌ(姉)とマリー(妹)が運営しています。さっそくワイナリーを訪問してみると、昨年は建設中だったセラーが無事に完成していました。
2023年訪問時は工事中だったセラーも……?
2024年訪問時には完成!
「新たなセラーが完成し保管スペースが増えたため、できることも増えました。これまでは、樽での熟成が終わったらすぐにボトリングをしていましたが、2023VTからは一度ステンレスタンクに移して保管し、ベストなタイミングになったらボトリングすることができます」と、ポリーヌから嬉しい報告が。今後の品質向上がさらに期待できます。ヴィンテージの情報だけでなく、こうした情報もとても重要です。
2023年訪問時。「ここにステンレスタンクを入れる予定!」とポリーヌ。
2024年訪問時。2023VTのワインの発酵はすべて新しいセラーで行われた。
葡萄畑では気候変動への対策が進む
2023年訪問時に見学した、オート コート ド ボーヌのピノ ノワールの畑。
毎年、暑く乾燥した気候に耐えられるクローンに植え替えを進めているという。
「ナントゥーの畑は急斜面にあり、畑作業がとても大変です。冬の気温はムルソーやヴォルネイなどよりも4~5℃ほど低く、夜も寒いですが、夏の気温はだいたい同じくらいです。コート ド ボーヌよりも標高が100mほど高いことが大きな違いです。気候変動の影響を受けて、2015 年以降はグリーンハーベストをしていません。天候が不安定で、どのようになるか分からないので、冬季剪定や芽かきの作業で収量を調整しています」とポリーヌ。この畑を見学したのは5月ですが、日差しの強さもあってとても暑く感じられました。
標高が高く、日照が強い「デファン」の畑。赤はブレンドに使っているため、この名称は白にのみ使用している。
「6月末から7月頃になると葡萄の葉が生い茂るため、樹が成長して葉が横に伸びてきたら、両端に設置しているワイヤーで挟み、葉が垂直に伸びるように固定します。この作業をしなければ、強風で葡萄の枝が折れてしまいます」とポリーヌ。ひとことで葡萄栽培といっても、具体的にどのような仕事をしているのかはイメージしづらいものです。美味しいワインを造るには、まず畑仕事が大切なのだと実感します。
特注の樽「メニール」
ひんやりとした地下セラー。アンフォラ型の樽「メニール」がシャルル家のこだわり。
こちらは地下セラーの様子です。シャルル ペール エ フィーユでは、木樽の他に、アンフォラを使ってワインを熟成させています。また、木樽の中でも、アンフォラ型で縦置きの「メニール」にも力を入れています。この樽は、パスカルがアンフォラからインスピレーションを得て樽メーカーに特別に注文したものです。「メニール」とは、先史時代の巨石記念物で1本の長い石を立てたものを表す名称「Menhir(メンヒル)」のフランス語での呼び名です。メニールのサイズも様々で、白ワイン用は500L、赤ワイン用は500L、420L、320Lに分かれています。
この形にした理由は「アンフォラの内部では、ワインが熟成中に自然に対流を起こすことが知られていたからです」とパスカルは語っています。この「メニール」で熟成させることで、成分がワインにしっかりと溶け込み、澱が出にくくなるそうです。また、白ワインはバターのような風味が、赤ワインはフルーティでしっかりとしたボディ、しなやかなタンニンが得られると言います。この「メニール」で熟成させているキュヴェは今回の視察では試飲していませんが、その他のキュヴェのクオリティを考えると、とても素晴らしいものになりそうです。
どのワインも安心のクオリティ。すべておすすめです!
昨年の訪問時には2022VT、今年の訪問時には2023VTのワインを数種類試飲しました。ポリーヌいわく「2022VTは、フレッシュで飲み進みやすい2021VTと、パワフルな2020VTの両方の特徴を持っています。質、量どちらも良いヴィンテージです。2023VTも2022VTに似ています」とのこと。樽試飲の段階なので最終的な判断はできませんが、新セラーの完成に伴い、2023VTはより良いタイミングでボトリングできるようになるため、期待できるといえるでしょう。
2023VTの樽試飲。樽からの試飲は判断が難しいものの、ワインの輸入をする上で重要な工程のひとつです。
シャルル ペール エ フィーユでは、オート コート ド ボーヌだけでなく、ポマールやヴォルネイ、ボーヌ、ジュヴレ シャンベルタンなども手掛けています。どれもクオリティが高く、本当におすすめしたいワインばかりです。そんな中でも、個人的に「推しワイン」にしているものがあります。「ボーヌ ルージュ プルミエ クリュ レ ブシュロット」です。取り扱い開始以前に試飲した2019VTから、ボトリング後の2021VT、樽から試飲した2022VTと2023VTと、いずれも芳醇な果実の風味とボディがありながら、重たすぎずエレガントな特徴が表現されていて、本当に素晴らしい美味しさです。
まずお試しで飲んでみたい、という方には「コトー ブルギニョン ルージュ」がおすすめです。ガメイとピノ ノワールを6:4でブレンドしていて、エレガントでありながら風味豊かで、コストパフォーマンスが高い1本です。また赤と白のどちらも、本拠地である「オート コート ド ボーヌ」をぜひお試しください! 特に、シャルル ペール エ フィーユを象徴する「キュヴェ デュ メニール」がおすすめです。
また、ボーヌのレストランでは、彼女たちのワインがオンリストされていましたが、食事と一緒に飲むとさらに美味しさが引き立つのもポイントです。コート ドールが注目されがちなブルゴーニュですが、有名産地以外にも美味しいワインがあります。シャルル ペール エ フィーユもまた、そんなワインを手掛ける生産者なのです。ぜひ一度、お試しください!
株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治
★次回は、ブルゴーニュ・コート ド ボーヌ・サントネの生産者、「ジュスタン ジラルダン」をご紹介します。
シャルル ペール エ フィーユのワイン一覧
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ブラン 【FD-163/白・辛口】
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ブラン レ ヴィーニュ ド デファン 【FD-164/白・辛口】
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ブラン キュヴェ デュ メニール 【FD-165/白・辛口】
・コトー ブルギニョン ルージュ 2021 【FC-719/赤・ミディアムボディ】
・コトー ブルギニョン ルージュ 2022 【FD-166/赤・フルボディ】
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ルージュ ボールガール 【FD-167/赤・フルボディ】
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ルージュ ヴィエイユ ヴィーニュ 【FD-168/赤・フルボディ】
・ブルゴーニュ オート コート ド ボーヌ ルージュ キュヴェ デュ メニール 【FD-169/赤・フルボディ】
・ボーヌ ルージュ プルミエ クリュ レ ブシュロット 【FC-927/赤・フルボディ】
・ボーヌ ルージュ プルミエ クリュ レ ゼプノ 【FD-170/赤・フルボディ】
・ポマール 2021 【FC-928/赤・フルボディ】
・ポマール 2022 【FD-171/赤・フルボディ】
・ヴォルネイ プルミエ クリュ レ フルミエ 【FC-926/赤・フルボディ】
・ジュヴレ シャンベルタン 【FD-172/赤・フルボディ】
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