【現地視察レポート】1996年の初訪問からおよそ30年。時の流れとともに大きく成長した協同組合「エステザルグ葡萄栽培者組合」&「ドメーヌ ダンデゾン」(経営企画室 藤野晃治)
25年来の古い友人を訪ねて
ドメーヌ ド ラ モルドレの後に向かったのは、フランス最小の協同組合とも称される「エステザルグ葡萄栽培者組合」です(以下、エステザルグ)。弊社が初めてエステザルグを訪問したのは1996年のことです。その当時はジャン-フランソワ ニックが醸造長を務めていましたが、彼は自身のドメーヌに専念するため退職しています。その代わりに、当時南ローヌでコンサルタント業務を請け負っていたドゥニ デシャンが2000年からエステザルグに参加し、2002年には醸造責任者を務めることになりました。以来、ドゥニとはおよそ25年の付き合いで、弊社社長の稲葉とは古い友人のような関係性を築いています。
"Bonjour, M.INABA !” 今年の現地視察時に、固い握手を交わすドゥニ デシャンと弊社社長の稲葉。
前任のジャン-フランソワ ニック(左/2001年訪問時)と後任のドゥニ デシャン(右/2004年訪問時)
10軒の農家が設備を共同利用し、良いワインを造る
エステザルグは、10軒の栽培農家が寄り集まってできた組合のため、フランス最小の協同組合と例えられることがあります。ところが、実際には畑面積約600ha、年間生産本数約200万本という、いわゆる「小規模生産者」とはまったく異なる規模の生産者です。10軒の栽培農家が設備を醸造設備や倉庫、販路を共同で利用することで、安定した品質かつコストパフォーマンスの高いワインを生み出しています。実は、ワイナリーで働くスタッフは10人しかおらず、主にセラーで5人、オフィスで5人が勤務しているそうです。
増設した最新のセラー。右側の屋根のある家のような建物がテイスティングルーム。
「実はここに2009年から住んでいたんだ!」とドゥニ。なんと、そこを改修してテイスティングルームにしたそうです。
ドゥニ自身も、前任のジャン-フランソワと同じく、2019年に自分のワイナリーを立ち上げました。その仕事に専念するために一度はエステザルグを離れていましたが、現在はエステザルグでの仕事も両立させています。週に4日ほどはエステザルグで働いているそうです。醸造だけではなく、マーケティングやセールスもこなしているといいます。ワイナリーを訪問すると設備の巨大さに驚かされますが、まるで家族経営のドメーヌのように小さなチームで仕事をこなしていることには、さらに驚かされました。エステザルグでは、設備をなるべくオートメーション化し、効率的な仕事をしています。
エステザルグの特徴
ワインショップも新しくなりました。「モダンなデザインだけど、木材などの伝統的な素材を使用しているよ!」とドゥニ。
■ラインナップ
①組合のワイン:複数の栽培農家の葡萄をブレンドして造る、エステザルグの名前でリリースするワイン。
②ドメーヌワイン:1軒の栽培農家の葡萄だけを使用して造る、いわば栽培農家自身のワイン。弊社が取り扱う「ドメーヌ ダンデゾン(シラーが得意)」のワインは、このドメーヌワインに該当します。
③バルクワイン:組合の品質基準に満たないと考え、瓶詰めせずにバルクで他社に売ってしまうワイン。
■特徴
①有機栽培またはそれに準ずる栽培
②野生酵母による偶発的なアルコール発酵
③二酸化硫黄を極力使用しない
④無濾過・無清澄での瓶詰め
祝日の訪問となったため、醸造所内は真っ暗。ドゥニが照明をつけながら案内してくれました。
今回のセラーの増設によって、新たに54基ものタンクを導入したそうです。また、より良い区画の葡萄のみを厳選して小ロットで仕込んだり、栽培農家それぞれのドメーヌワインに新たなキュヴェを造ったりするために、導入するタンクは小さいものを採用するようにしています。また、瓶詰めの際には窒素ガスを充填し、ヘッドスペースの酸素を置換して酸化を防げるようにしているそうです。これもワインのクオリティを重視している証といえます。
「建物は新しくなったけれど、畑も、土壌も、ワインの種類も、農家の数も変わっていない。そしてもちろん、ワインを造る場所も変わっていないよ。でも今後は、それぞれの農家のドメーヌワインを増やしていきたいと考えているよ」とドゥニが話してくれました。
巨大なステンレスタンク。中は三層に分かれており、例えば発酵用、発酵用、貯蔵用のように機能しているとのこと。
協同組合と侮るなかれ
現地では2023VTのワインを試飲しました。「2023VTは暑いヴィンテージでしたが、シラーは暑い年でもそれほど影響を受けず、高品質なタンニンが得られました。ドメーヌ ダンデゾンのヴィエイユ ヴィーニュ(F-471)は、ブラックベリーやブルーベリーのようなダークフルーツの風味があり、スパイシーさがあって、持続性があって柔らかさもあります」とドゥニ。また、エステザルグのラ グラナッチャ(FC-774)については「グルナッシュ100%。もともとこの品種は色が濃くないので、ワインにした時もそれほど濃い色合いにはならない。タンニンが柔らかく抽出できた。アルコール度数は高くなったが酸があるため、ちょうどよいバランスになっている」と話してくれました。
エステザルグ、ドメーヌ ダンデゾンのどちらのワインも充実感があり、とても分かりやすく美味しいワインで、「こんなにコストパフォーマンスが高いのか!」と改めて実感できます。また、新たにセラーを増設し、小ロットでの仕込みにも対応している様子を見ると、彼らが成功していることが良く分かります。弊社が彼らのワインを輸入し始めて25年以上が経ちますが、これから先もさらに成長を続けてくれることが確信できる、とても有意義な訪問となりました。
株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治
★次回は、ブルゴーニュ・マコネの生産者「ダヴィド ビアンフェ」をご紹介します。
エステザルグ葡萄栽培者組合のワイン一覧
・コトー デュ ポン デュ ガール キュヴェ デ ガレ 【FB-291/赤・ミディアムボディ】
・コート デュ ローヌ ルージュ ル プティ アンデゾン 750mL 【FB-992/赤・ミディアムボディ】
・コート デュ ローヌ ルージュ ル プティ アンデゾン 375mL 【FC-057/赤・ミディアムボディ】
・コート デュ ローヌ ヴィラージュ シニャルグ ラ グラナッチャ 【FC-774/赤・フルボディ】
➡「エステザルグ葡萄栽培者組合」について、もっと知りたい方はこちら!
ドメーヌ ダンデゾンのワイン一覧
・コート デュ ローヌ ヴィエイユ ヴィーニュ 【F-471/赤・フルボディ】
・コート デュ ローヌ ヴィラージュ シニャルグ 【FA-336/赤・フルボディ】
➡「ドメーヌ ダンデゾン」について、もっと知りたい方はこちら!