【現地視察レポート】伝説となった醸造家、クリストフ デロルムの遺志が宿る別格のワイン。ヴァン ド フランスから圧巻のクオリティ!(経営企画室 藤野晃治)
伝説の醸造家「クリストフ デロルム」
ビュルル家を後にして向かったのは、フランス三大ロゼワインのひとつ、「タヴェル ロゼ」を生むタヴェル村です。生産者は「ドメーヌ ド ラ モルドレ」(以下、モルドレ)。タヴェル ロゼを始め、その周辺産地のリラックやシャトーヌフ デュ パプなど、様々なワインを手掛けています。モルドレは、タヴェルではもちろんのこと、これらのAOCすべてで素晴らしい評価を得ており、南ローヌにおける最高峰の生産者のひとつとして知られています。弊社が彼らのワインの輸入を始めたのは2002年、今から22年前のことでした。以来、毎年のように訪問している生産者のひとつです。
ワイナリーが設立されたのは1986年のことで、比較的歴史の浅いドメーヌといえます。当初のオーナーはフランシス デロルムで、もともと他業種からの参入ということもありワイン造りへの熱意に満ちていましたが、交通事故で身体を悪くしてしまい、1989年には息子のクリストフがワイナリーに参加し、中心的な役割を果たすようになりました。それからわずか10年ほどで、モルドレは、南ローヌのトップ ドメーヌの一員として知られるようになりました。
(1989年から父の代わりにドメーヌを牽引し、伝説を築き上げたクリストフと、クリストフの娘で現オーナーを務めるアンブル。
「BORN TO MAKE WINE(ワインを造るために生まれてきた)」という文字が印象的なTシャツもクリストフらしい)
かの有名なロバート パーカー氏は『ワイン アドヴォケイト』で、「シャトーヌフ デュ パプ ラ レイヌ デ ボワ 」の2001VTに100点満点を献上し、その品質を絶賛しました。タヴェルについては、同じく『ワイン アドヴォケイト』が、「ラ レイヌ デ ボワ」に2011~2017VT、2022VTで93点を与えており、常に安定したクオリティの高さで知られています。また、『ヴィノス』でのタヴェルのトップスコアは94点で、モルドレの「ラ レイヌ デ ボワ」の2020VTが獲得しています。さらに、『ワイン アドヴォケイト』のリラックのトップスコアは94点で、「ラ レイヌ デ ボワ」の2007VT、稀にしか造られない最上級品「ラ プリュム デュ パントル」の2012VT、2016VTのみがこの評価を獲得しています。
このように、それぞれのAOCで最高峰の評価を獲得し続けてきたモルドレでしたが、不幸にもクリストフが2015年に突然この世を去り、窮地に立たされることになりました。ジェブ ダナック(2017年に独立するまで『ワイン アドヴォケイト』のローヌを担当)は、『ワイン アドヴォケイト#221』で次のようにコメントしています。「2015年の6月10日の朝、クリストフ デロルムが52歳の若さで心臓発作によりこの世を去った事を知り、私はショックで落ち込んだ。(中略)彼は信じられないほど熱血的な人物で、何が何でも品質を追求していた」。
受け継がれるクリストフの遺志
(クリストフの遺志を引き継ぐ二人。レミ ショーヴェとアンブル デロルム)
クリストフのワイン造りの哲学は、2010年から彼の右腕として勤務する醸造家のレミ ショーヴェへと受け継がれています。また、クリストフの娘アンブルもドメーヌに参加しており、『ワイン アドヴォケイト#245』では、「まだ20代と若いアンブル デロルムのリーダーシップの下、タヴェルの歴史的なエステートは、様々な賞賛すべきワインを造り続けている」と評価されています。新体制でのスタートは、モルドレにとっても予期しないものではありましたが、リリースされたワインは、クリストフの掲げた品質第一主義の哲学を反映した素晴らしいものでした。
『ワイン アドヴォケイト#227』は、「これらの2015年の樽サンプルを見る限り、このドメーヌは今でも信じられないほどの実力を持っていることは明らかです」とコメントし、「シャトーヌフ デュ パプ ラ レイヌ デ ボワ」の2016VTは、『ワイン アドヴォケイト#239』で98点、『ジェブ ダナック.com』で100点を獲得し、新生モルドレの実力を世に知らしめることとなりました。2019年の訪問時にアンブルが「どんなヴィンテージだろうと、何があろうと、私たちは品質を第一に考えています」と語った言葉が印象に残っています。
現在、ワイナリーを牽引するのは、醸造責任者のレミ ショーヴェと、クリストフの娘のアンブル、そしてクリストフの妻でありアンブルの母、マドレーヌです。今年の訪問では、アンブルに話を聞きました。まず変更点としては畑面積の縮小が挙げられます。以前は58haの葡萄畑を所有していましたが、現在は42haに減らしています。その理由について、アンブルは「私たちは葡萄畑をビオディナミ栽培で管理しており、収穫を含め、すべての作業を手で行っています。畑面積を減らしたのは、完璧な仕事をするためです」。
アンブルはさらに続けます。「私の祖父や父から情熱や愛を受け継ぎ、私たちの世代の仕事が結果として素晴らしいワインになっています。ビオディナミ栽培で、畑で多くの時間を費やしていることもそうですが、素晴らしい葡萄樹があり、その樹齢も上がっていて、それがワインに複雑さやエレガンス、フィネスを与えてくれ、酸がキープできるワインが造れるということ。これまでにやってきた過去の仕事と、現在の仕事が結びついていること。そして、その仕事を稲葉社長が長年見続けてくださっていることが本当に嬉しいです」。
傑出したクオリティ。すべてのワインがおすすめです!
モルドレの特徴は、「タヴェル」、「リラック」、「シャトーヌフ デュ パプ」のすべてのアペラシオンで素晴らしいワインを造り上げていることです。それぞれのアペラシオンで高い評価を獲得しています。しかしそれだけではないのもモルドレの凄いところです。今回の訪問では、ほとんどすべてのワインを試飲しましたが、「ヴァン ド フランス」のスパークリングワイン、「レ ビュル ド ラ モルドレ ペティアン ナチュレル ロゼ(FD-271)」、そして白ワインの「ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ブラン(FC-818)」の時点で、そのクオリティに圧倒されました。
「2023VT、2022VTはどちらも暑いヴィンテージでした。2023VTの方が、冬から春にかけて雨が多く、全体的に暑すぎなかったため、2022VTよりも綺麗なアロマを持つフレッシュなスタイルに仕上がりました」とアンブル。今回試飲したワインの大半はこの2つのヴィンテージでしたが、スタンダードクラスからトップクラスまで、酸とミネラルがあり、本当に美しく、とても美味しく、文句のつけようもないほどの完成度でした。弊社社長の稲葉が思わず、「南ローヌでありながら本当に綺麗な酸がある。なんでこんなに素晴らしいワインが出来るのですか」と質問する場面もあるほど。ヴィンテージによる優劣はなく、すべてのワインが完成されていて、どのワインも心からおすすめできます。
(手前はシャトーヌフやタヴェルで見受けられる礫/"Pebbles"、奥がタヴェルの典型的な平らな石灰岩/"Lauzes")
★参考:主要なワインガイドにおける評価(2024.10.25現在)
※独占○位は、他の同点銘柄が無い場合に表記しています。
・タヴェル ロゼ
『ヴィノス』歴代1位:「ラ レイヌ デ ボワ 2020」94点(独占1位)。「同キュヴェ 2012、2015、2017、2018」、「ラ ダム ルス 2020」93点(2位)。
『ワイン アドヴォケイト』歴代2位:「ラ レイヌ デ ボワ 2022、2017~2011」93点。
『デカンター』歴代2位:「ラ デイヌ デ ボワ 2016」95点。
『ジャンシス ロビンソン』歴代1位:「(キュヴェ名記載無し)2004」18点(独占1位)、「ラ レイヌ デ ボワ 2020」17.5点(2位)。
・リラック 赤
『ヴィノス』歴代2位:「ラ レイヌ デ ボワ ルージュ 1999」91+点。
『ワイン アドヴォケイト』歴代1位:「ラ レイヌ デ ボワ 2007」、「ラ プリュム デュ パントル 2012、2016」94点、「ラ レイヌ デ ボワ 2016」93+点(2位)。
『デカンター』歴代3位:「ラ ダム ルス 2017」93点。
『ジャンシス ロビンソン』歴代1位:「ラ レイヌ デ ボワ ルージュ 2016、2014、2007、2006、2004、2003」、「ラ ダム ルス 2013」17点。
・リラック 白
『ヴィノス』歴代1位:「ラ レイヌ デ ボワ ブラン 2022、2015、2010」90点。
『ワイン アドヴォケイト』歴代1位:「ラ レイヌ デ ボワ 2011」93点(1位)、「同キュヴェ 2017~2015、2013、2012」92点(2位)。
『デカンター』歴代3位:「ラ レイヌ デ ボワ 2021」92点。
『ジャンシス ロビンソン』歴代1位(白):「ラ レイヌ デ ボワ ブラン 2003」17.5点(独占1位)、「同キュヴェ 2004」17点(2位)。
・シャトーヌフ デュ パプ 赤 ※モルドレは赤のみ生産
『ヴィノス』歴代4位:「ラ プリュム デュ パントル 2005」、「ラ レイヌ デ ボワ 2016」96点。
『ワイン アドヴォケイト』歴代2位:「ラ レイヌ デ ボワ 2010」99+点。
※「ラ レイヌ デ ボワ 2001」にロバート パーカー、ジェブ ダナックが100点をつけましたが、後にジョー チェルヴィンスキーにより96点へと下方修正されました。
『デカンター』歴代3位:「ラ レイヌ デ ボワ 2022」98点。
『ジャンシス ロビンソン』歴代5位:「ラ レイヌ デ ボワ 2006、2018」18点。
伝説的な評価を十数年で築き上げたクリストフが亡くなり、アンブルを中心とした新体制になって約10年。跡を継いだ醸造家のレミ、クリストフの娘アンブルと妻マドレーヌが背負う重責は計り知れません。しかし、レミがワインのクオリティをしっかりと保ち、むしろ向上させており、クオリティ面では微塵の不安もありませんでした。また、アンブルとマドレーヌがオーナーとして新生モルドレの舵を取り、新たなヴァン ド フランスのワインに挑戦するなど、常に成長を続けています。モルドレはクリストフ亡き今もトップ生産者であることが実感できる訪問となりました。
株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治
★次回は、コート デュ ローヌの生産者「エステザルグ葡萄栽培者組合」、「ドメーヌ ダンデゾン」をご紹介します。
■ドメーヌ ド ラ モルドレのワイン一覧
○ヴァン ド フランス
・レ ビュル ド ラ モルドレ ペティアン ナチュレル ロゼ 【FD-271/ロゼ・泡・辛口】
・ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ブラン 【FC-818/白・辛口】
・ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ロゼ 【FD-269/ロゼ・辛口】
・ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ルージュ 2022VT 【FC-827/赤・フルボディ】
・ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ルージュ 2023VT 【FD-268/赤・フルボディ】
・ラ ルミーズ ド ラ モルドレ ルージュ(SO2無添加) 【FD-267/赤・フルボディ】
○AOC コート デュ ローヌ
・コート デュ ローヌ ロゼ 2022VT 【FC-820/ロゼ・辛口】
・コート デュ ローヌ ロゼ 2023VT 【FD-266/ロゼ・辛口】
・コート デュ ローヌ ルージュ 2021VT 【FC-619/赤・フルボディ】
・コート デュ ローヌ ルージュ 2022VT 【FD-265/赤・フルボディ】
・コート デュ ローヌ ルージュ 2023VT 【FD-264/赤・フルボディ】
○AOC タヴェル
・タヴェル ロゼ ラ ダム ルス 【FD-263/ロゼ・辛口】
・タヴェル ロゼ ラ レイヌ デ ボワ 2022VT 【FC-821/ロゼ・辛口】
・タヴェル ロゼ ラ レイヌ デ ボワ 2023VT 【FD-262/ロゼ・辛口】
○AOC リラック
・リラック ブラン ラ レイヌ デ ボワ 【FD-258/白・辛口】
・リラック ルージュ ラ ダム ルス 2019VT 【FC-822/赤・フルボディ】
・リラック ルージュ ラ ダム ルス 2020VT 【FC-623/赤・フルボディ】
・リラック ルージュ ラ ダム ルス 2022VT 【FD-260/赤・フルボディ】
・リラック ルージュ ラ レイヌ デ ボワ 2020VT 【FC-823/赤・フルボディ】
・リラック ルージュ ラ レイヌ デ ボワ 2022VT 【FD-259/赤・フルボディ】
○AOC シャトーヌフ デュ パプ
・シャトーヌフ デュ パプ ルージュ ラ ダム ヴォヤジューズ 2021VT 【FC-825/赤・フルボディ】
・シャトーヌフ デュ パプ ルージュ ラ ダム ヴォヤジューズ 2022VT 【FD-257/赤・フルボディ】
・シャトーヌフ デュ パプ ルージュ ラ レイヌ デ ボワ 2021VT 【FC-826/赤・フルボディ】
・シャトーヌフ デュ パプ ルージュ ラ レイヌ デ ボワ 2022VT 【FD-256/赤・フルボディ】
○AOC コンドリュー
・コンドリュー 【FC-631/白・辛口】
➡「ドメーヌ ド ラ モルドレ」について、もっと知りたい方はこちら!