【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)ビュルル家の4人。左からフローラン(次男)、クレール(ベルナールの娘)、ベルナール(長男)、ダミアン(三男)。

ちょっとふざけるベルナールに、娘のクレールや他の兄弟がツッコミを入れる。常に笑いが絶えないのがビュルル家訪問の特徴です。

 

 お手頃ワインの聖地、南ローヌへ

ボルドーはモンターニュ サンテミリオンの生産者、シャトー ロシェ コルバンを訪問した後、ボルドー空港からマルセイユ空港へ向かいます。マルセイユ空港からしばらくは、車での移動が続きます。次の訪問先は、弊社にとって重要産地のひとつである、コート デュ ローヌ南部です。コート デュ ローヌ南部には、かの有名なシャトーヌフ デュ パプがありますが、北部と比較すると、いわゆる高級ワインの産地は少なくなります。また、温暖で様々な葡萄を育てやすく、お手頃な価格で美味しいワインを探すのにぴったりのエリアです。

 

弊社では、特にコート デュ ローヌ南部のラインナップに力を入れており、現時点で12軒の生産者を取り扱っています。その中でも、稲葉のローヌワインの原点ともいうべき存在が、「エドモン ビュルル」です。エドモンには3人の息子たちがいますが、長男ベルナールは「ドメーヌ フォン サラド」、次男フローランと三男ダミアンは「ドメーヌ ビュルル」でそれぞれ活躍しています。弊社が現地を訪問する際は、この2軒のドメーヌが一緒になって、どちらかのワイナリーで商談を行いますが、今年は「ドメーヌ ビュルル」のワイナリーが建て替え中のため、「ドメーヌ フォン サラド」を訪れることになりました。今回の訪問レポートでは、まずビュルル家について改めてご紹介いたします。

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

 

弊社がビュルル家のワインを輸入し始めたのは1992年、今から32年前のことでした。当時のオーナー「エドモン ビュルル」は、1965年に父からワイナリーを引き継ぎ、ジゴンダスの中心地から西へ約3km離れたアモー ド ラ ボーメットに新たなワイナリーを建設。1968年には自社元詰めを始め、高品質なワイン造りを開始しました。エドモンが造るワインは、濾過も清澄もしない、力強くしっかりとした味わいながら、どこか南ローヌらしい素朴さを持っていました。

 

弊社社長の稲葉は、その味わいに衝撃を受け、彼らのワインを日本の皆様にも是非楽しんでいただきたいという思いから輸入を始めました。その後、彼のワインは、日本だけでなく世界中のワインファンを魅了しました。たとえば、『ワイン アドヴォケイト』のロバート パーカー氏は、1997年1月の記事で「ジゴンダス レ パリエルダス」の1989VTに93点、1990VTに92点をつけ、その味わいを称賛しています。同記事でロバート パーカー氏がコメントした、シャトー ラヤスのセカンドラインにあたる「ピニャン シャトーヌフ デュ パプ ルージュ」の1989VTが93点だったことを考えると、素晴らしい評価を得ていることが分かります。

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)エドモン ビュルル(左)

 

 3兄弟の絆

このビュルル家の名を冠した「ドメーヌ ビュルル」は、エドモンだけでなく、その息子たちによっても運営されるようになります。1995年には次男のフローランが畑作業を中心に、1997年には三男のダミアンが醸造を中心に手伝いを始めました。家族の協力のもと、さらに躍進を続けるかに見えたエドモンでしたが、不幸にも2004年に、66歳の若さでこの世を去ってしまいます。フローランとダミアンが新たにオーナーとなりましたが、彼らの道のりは決して平坦なものではありませんでした。

 

エドモンが亡くなった直後の2004VTは、品質に納得出来る銘柄がジゴンダスのみしかなく、弊社ではその他のワインの輸入を控えるほどでした。このことは2人に危機感を与えました。また、2人の状況を見るに見兼ねて、実家を出て義両親のワイナリー「フォン サラド」のオーナーとなっていた長男ベルナールが、時間を見つけては実家に戻り、葡萄栽培についてアドバイスするなど弟達をサポートしました。例えば、収量制限を行い、収穫のタイミングも、葡萄の皮まで完熟した状態で摘み取るなど、父の時代にはなかった取り組みも行いました。

 

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

(三男ダミアンと長男ベルナール)

 

こうした努力の結果、品質の優れた葡萄が得られるようになり、ワインの品質も安定していき、3人でドメーヌ ビュルルのワインを復活させたのです。2010年の現地訪問時には、ダミアンがドメーヌを引き継いだ当時を振り返り、次のように語っています。「父の急逝後、ドメーヌを引き継ぎ、生活のためにワインを造っていかなければならないことはプレッシャーだった。数年間、兄のアドバイスを受け、そのプレッシャーも乗り超えることが出来た。今は幸せに思えるようになり、楽しんでワインを造っているよ」。

 

私たちが訪問する度、ビュルル3兄弟はいつも明るく茶化しあっており、ベルナールの娘クレールが「ちょっと、3人とも静かにして!」とたしなめる場面もあるほどです。しかし、そんな彼らの姿が見られるのは、偉大な父、エドモンのワイン造りを途絶えさせないよう奮闘した絆があるからこそなのかもしれません。そんな彼らが造るワインは、今では全く問題ないばかりか、むしろ偉大な父エドモンを超えるほどにまで磨き上げられています。弊社社長の稲葉も、「ほとんど毎年のように訪問していますが、本当はあなたたちのワインは試飲しなくても良いくらいに、期待を裏切ったことがありません」と明言しています。

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)(「ドメーヌ フォン サラド」のクレールとベルナール。もちろん、商談中はこんな真剣な表情を見せる場面も)

 

 

 「たとえ状況が悪くても、私たちは常に発展していかなければならない

さて、お待たせしました。これから先は、2024年5月の現地訪問レポートです。とはいっても、今回の訪問では畑、ワイナリーの見学は省略し、最新の2023VTを中心に試飲をするのみにとどまりました。そのため、内容を簡単にご紹介します。まずはその前に、2軒のビュルル家のワイナリーについて、その違いを以下にご説明します。

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)(「ドメーヌ ビュルル」のワイナリーは建設中。「収穫までに間に合わせないと大変!」とクレール)

 

■ドメーヌ ビュルル

次男フローランと三男ダミアンが運営するワイナリー。コート デュ ローヌ南部ならではの田舎の雰囲気がワインを通して見えるような、エドモンのワインに通じる素朴さがボトルに詰まっています。ワインは、明るく濃厚で、たっぷりの果実味が楽しめるスタイルです。しっかりと力強いものの、近年はタンニンの質感が非常に滑らかになり、若いヴィンテージであっても飲みやすく仕上げられています。

 

■ドメーヌ フォン サラド

長男ベルナールと、その娘のクレールが運営するワイナリー。ドメーヌ ビュルルとの大きな違いは、まず白ワインがあることです。暖かいコート デュ ローヌ南部のイメージとは異なり、フレッシュでしっかりとした酸味を備えた美しい白ワインを造っています。赤ワインについては、ほとんどのキュヴェで発酵前低温浸漬(コールドマセレーション)を行い、ピュアな果実味と滑らかなタンニンを持つエレガントなスタイルに仕上げています。

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

 

続いて、ヴィンテージ情報についてです。

 

■2023VT:暑く乾燥したヴィンテージ

「暑く乾燥したヴィンテージでした。そのため、アルコール度数は14~15.5%になりましたが、自然のことなのでコントロールできません。だからこそ、高いアルコールを感じさせないように、バランスのとれたワインになるように造っています。豊作の年で、ワインは十分な量を生産することができました」

 

■2022VT:暑く乾燥したヴィンテージ

「2021VTより収量は増えました。2020VTに似ています。2020VTは天気が良く、アルコール度数も高くなりましたが、2022VTはそれほど高くならず、14~14.5%ほどに留まりました。品質は高く、安定していてバランスも良いワインができました」

 

■2021VT:冷涼で雨が多いヴィンテージ

「特殊なヴィンテージで、あまり納得のいかない年でした。ドメーヌ フォン サラドでは、看板ワインのヴァケラス レ オート ド ラ ポンシュは、品質に満足できなかったため生産せず、ワインをネゴシアンに売ってしまいました。また、ドメーヌ ビュルルではコート デュ ローヌ ヴィラージュ サブレも生産していません」。

 

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

 

今年の訪問時に試飲した2023VT、そして昨年の訪問時に試飲した2022VTは、どちらもたっぷりの果実味がありながらも、決して重たすぎることはなく、するすると口の中を滑るようなタンニンのしなやかさが感じられました。2021VTについても、納得のいかないものは生産しないという彼らの言葉通り、難しいヴィンテージでありながらも、とても素晴らしいワインに仕上げられています。

 

ここで、今回の訪問時に印象に残ったクレールの言葉をご紹介します。

 

「現在、ワインビジネスは危機的な状況にあります。それはワインの生産量が需要よりも多くなっているということです。コート デュ ローヌだけでなく、ボルドーでもワインを廃棄しなければならない生産者がいるほどです。特に2022VT、2023VT は豊作だったのでワインが多く生産されました。私たちのように、ジゴンダスやヴァケラスなどの需要の多い畑を持っている生産者はともかく、持っていない生産者にとっては難しい状況かもしれません。しかし、たとえ状況が悪くても、私たちは常に発展していかなければならないのです」。

 

エドモンが亡くなった際、一度は窮地に立たされたビュルル家だからこそ、挑戦することや発展することの大切さが、人一倍分かっているのかもしれません。ヴィンテージについては自然のこととして受け入れながら、生産者として目指すべきワインのスタイルを見据え、それに対して仕事をする真摯な姿勢は、何よりも彼らのワインに表現されています。「ドメーヌ ビュルル」と「ドメーヌ フォン サラド」。それぞれに異なるスタイルを持ちながらも、根底を流れるのは偉大な父エドモンに始まる高品質なワイン造りの哲学です。弊社にとってのローヌワインの原点であり、二人三脚で歩んできた良きパートナー、まさに家族のような生産者といえます。そんなビュルル家の美味しいワインを、ぜひ多くの方に手に取っていただけましたら幸いです。

 

株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治

 

 

 

★次回は、コート デュ ローヌの生産者「ドメーヌ ド ラ モルドレ」をご紹介します。

 

 

【現地視察レポート】もはや家族のような存在? チームINABAの訪問は当たり前! 弊社のローヌワインの原点「ビュルル家」(経営企画室 藤野晃治)

 

 

ドメーヌ ビュルルのワイン一覧

ビュルル エスク 【FC-800/赤・フルボディ】

コート デュ ローヌ ルージュ 【FD-056/赤・フルボディ】

コート デュ ローヌ ヴィラージュ サブレ 【FD-055/赤・フルボディ】

ヴァケラス ラ ミュズ 【FD-053/赤・フルボディ】

ヴァケラス フュ ド シェーヌ キュヴェ ダミアン 【FD-054/赤・フルボディ】

ジゴンダス レ パリエルダス 2021VT 【FB-758/赤・フルボディ】

・ジゴンダス レ パリエルダス 2022VT 【FD-051/赤・フルボディ】

 

➡「ドメーヌ ビュルル」について、もっと知りたい方はこちら! 

 

ドメーヌ フォン サラドのワイン一覧

ル ブラン クレレット 【FC-627/白・辛口】

ル ブラン ヴィオニエ 【FC-963/白・辛口】

ヴァケラス ブラン キュヴェ ル パンシャン 【FD-045/白・辛口】

ヴォークリューズ ベー 【FD-046/赤・フルボディ】

ヴァントゥー レ テール ルージュ 【FC-626/赤・フルボディ】

ヴァントゥー ル カリニャン 【FD-047/赤・フルボディ】

プラン ド デュー キュヴェ エゴイスト 2021VT 【FC-732/赤・フルボディ】

・プラン ド デュー キュヴェ エゴイスト 2022VT 【FD-049/赤・フルボディ】

ヴァケラス レ オート ド ラ ポンシュ 【FD-048/赤・フルボディ】

ヴァケラス キュヴェ プレスティージュ 【FB-523/赤・フルボディ】

ジゴンダス キュヴェ レ ピジェール 【FD-050/赤・フルボディ】

 

➡「ドメーヌ フォン サラド」について、もっと知りたい方はこちら! 

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