【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 ガイヤックについて

トゥールーズから車を走らせて約1時間、目当ての建物が見えてきました。フランス南西地方、ガイヤックのスエル村でワイン造りを営む、「ダーム ド サッラシ(Dames de Sarrasi)」のワイナリーです。ガイヤック、と聞いてすぐに場所が思い浮かぶ方はかなりのワイン通といえるでしょう。なぜならとてもマイナーなエリアだからです。そこで、まずは少し位置関係を説明します。

 

有名なボルドーを除く、フランス南西部に広がるワイン産地一帯のことを総称して「南西地方/Sud-Ouest(シュッド-ウェスト)」と言います。南西地方では、「黒ワイン」と呼ばれる色の濃いワインを産むカオールや、渋み成分を表す「タンニン」に由来するともいわれるタナ種を使った赤ワインで知られるマディランという産地が有名です。弊社にとって大切な生産者のひとつ、シャトー デ ゼサールのワイナリーも南西地方のベルジュラックにあります。ガイヤックは、南西地方の中では内陸部に位置しており、カオールから南東に90kmほど離れています。

 

 

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

ガイヤックの葡萄栽培の歴史は、古代ローマ時代(紀元前7 世紀頃)かそれ以前に遡ります。1 世紀初頭にはワインの生産が確立されたとも言われており、現在ではベルジュラック、カオールに次ぐ栽培面積を誇る一大産地となっています。ダーム ド サッラシのワイナリーは、このガイヤックの中心地から外れた、北西20kmほどの距離のスエル村にあります。

 

スエル村はガイヤックの中でも最も石灰岩が多く、暑いヴィンテージであっても酸を保ち、フレッシュな味わいのワインができるそうです。実際に彼らのワインを飲んでみると、しっかりと完熟した葡萄の味わいが感じられる一方で、豊かな酸が新鮮な印象を与えてくれていて、この土地ならではの味わいが楽しめます。

 

 スエル村へようこそ!

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前置きが長くなりましたが、ここからはワイナリーの訪問レポートです。まず出迎えてくれたのは、当主のブルーノ モントルと娘のマリーです。ダーム ド サッラシはもともと、「シャトー モントル」という名前でしたが、2022年にワイナリーの名前を変更しました。

 

「シャトー(城)という重みのある言葉は、私たちの日常に馴染みません。だからワイナリー名を変更することにしました。サッラシというのは私たちの先祖が住んでいた土地の名前で、ダームは彼女たちを指しています。祖先の女性たちへの敬意を込めました」とマリーは話します。ちなみに、ブルーノは今年の夏に引退予定。そのため、今後はマリーがひとりでワイナリーを運営することになります。畑はすべて有機栽培のため、ひとりでも完璧な仕事ができるように、22haあった畑面積を15haに減らしています。

 

 

 

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さっそく案内していただいたのは、スエル村の葡萄畑です。白葡萄のモーザック、ソーヴィニヨン ブラン、ミュスカデル、ロワン ド ルイユ、黒葡萄のデュラス、ブローコルが区画を分けて植えられています。周囲を森で囲まれており、どこからか小鳥のさえずりが聞こえてくるのどかな場所でした。葡萄の畝と畝の間には、カバークロップとしてイネ科やマメ科の植物を植えていて、緑豊かな美しい葡萄畑となっています(個人的なことで恐縮ですが、花粉症なのでくしゃみが止まらなくなりました。まさに大自然の中の畑です!)。

 

ところで、葡萄樹の足もとの白い小石が見えるでしょうか? これが石灰の礫で、ワインの味わいをフレッシュにしてくれるそうです。また、葡萄畑はスエル村以外にも点在しており、隣のフローセイユ村や、その隣のアマランス村を含め、朝霧が出ることで日照を和らげ、気温を低く保ち、湿度を与えてくれます。この自然環境のおかげで、葡萄は高い酸を保ってくれるため、完熟するまで収穫を待っても重たい味わいになりません。

 

 

 

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続いて見学したのは、同じスエル村内にある赤ワイン用の葡萄畑です。黒葡萄のブローコルやプリュヌラール、シラーが植えられています。見比べると、土の色が先ほどと異なっています。こちらの畑は粘土質の土壌で、先ほどの畑よりも夏が少し暑く、黒葡萄の生育に適しているそうです。この畑の周りは生垣に囲まれています。

 

「畑の周辺に生物多様性が豊かな環境があることが非常に重要であると考え、様々な取り組みを行っています。こうした環境が、鳥や昆虫の大切な生息地となっています。特に近年続いている暑く乾燥した夏の間、生け垣は鳥たちのシェルターになります」とマリー。葡萄は自然の恵みであるからこそ、その自然環境を大切にしたいというのは当然なのかもしれませんね。

 

 濃密だけれど重たくはない……まさに感動の味わい!

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

葡萄畑の見学を終え、ワイナリーに戻ってきました。ダーム ド サッラシでは、ワインへの負担を減らすために、グラビティ―フローシステムを採用しています。これは、ポンプを使うのではなく、重力で自然にワインを移動させるための仕組みです。収穫された葡萄は、果汁を出すために潰され、アルコール発酵用の容器に入れられます。

 

写真の上部はステンレスタンクですが、左側は縦に長く、右側は少し横に広がった形状となっています。白ワインは果汁のみを発酵させるため縦長のタンクに入れますが、赤ワインは果皮や種子も一緒に漬けこみながら発酵させるため、果汁と固形物との接触面積を広くするために横に広くなっているのです。

 

また、左下は一部の赤ワインの発酵に使用しているコンクリートタンクです。コンクリートは外気温の影響を受けにくいため、急激な温度変化が起こらず、安定した発酵管理ができるといわれています。また、ステンレスタンクよりも形状の自由度が高いため、限られたスペースを効率よく使用することもできます。右下は木樽で、一部のワインの発酵と熟成に使用しています。

 

ダーム ド サッラシは、4つの村(スエル、アマラン、フローセイユ、ドナザック)の様々なテロワールの葡萄畑を所有し、様々な葡萄品種を栽培しています。そのため、ワイン造りにおいても「ブレンド」を非常に重視しているのですが、アルコール発酵の途中でブレンドするという、個性的な手法を取り入れています。

 

 

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

「すべてのワインは野生酵母で自然発酵させています。選別酵母を使わない理由は、ヴィンテージやテロワールの特徴を表現したいからです。また、私たちのワインは、ブレンドによる複雑さがポイントです。アルコール発酵の途中でブレンドすることで、調和のとれた味わいを生み出しています。この方法は、ガイヤックで一般的なわけではなく、私の父が考え出した手法です。

 

また、発酵後のワインのブレンドも年間を通して行っており、上級キュヴェはヴィンテージによっては造りません。経済的なことを考えると、上級キュヴェをたくさん造った方が良いのですが、お客様が求めているレベルを常に提供したいと考えているため、厳しい基準を設けています。納得しなければ造らない、というのが私たちのこだわりです」とマリー。

 

実際にワインを試飲してみると、どのワインも完熟したフルーツの味わいがたっぷりとありながら、高いアルコールを感じさせないバランスの良い仕上がりです。この地域特有の自然環境が育む豊かな酸と、複数の葡萄品種を巧みに組み合わせる造り手の手腕が素晴らしいハーモニーを生み出しています。さらに興味深かったのは、2015や2017といったバックヴィンテージの試飲です。

 

「私たちのワインは熟成させても張りがあって、酸を保つことができていることが分かると思います」というマリーの言葉通り、本当に見事なまでの香りと味わいが楽しめました。ガイヤックというマイナーなエリアでこれほどのワインに出会えるなんて……! まるでダイヤモンドの原石を掘り当てたかのような、驚きの試飲になりました。

 

 

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

ダーム ド サッラシのワインは、生産量の90%が国内向けの販売となっており、輸出量はごくわずかです。そのため、アメリカやイギリスの有名なワインガイドで名前を探すことは難しいでしょう。マリーの父、ブルーノはもともと、畑とセラーにかかりっきりで、評論家に試飲してもらう機会がほとんどなかったそうですが、つい最近、マリーの夫が評価誌にワインを送ってみたらどうかと提案したのをきっかけに、フランスの著名なワインガイドのひとつ、『La Revue de Vin de France(RVF)』の2023年11月号に掲載されることになりました。

 

「SUD-OUESTを支える若きワインメーカーたち」と題した記事で取り上げられ、辛口白ワインの最上級キュヴェ、「レ ペゾ ガイヤック ブラン 2020」が93点を叩き出すという快挙を遂げました。もちろん、点数がすべてではありませんが、ダーム ド サッラシのワインの美味しさが専門誌で取り上げられたことは嬉しい出来事です。

 

 

 無名ながら本物を手掛ける生産者、ダーム ド サッラシの美味しいワインをぜひ!

 

【現地視察レポート】フランス南西地方、ガイヤックで見つけたダイヤの原石!?  完熟していながらフレッシュな味わいが楽しめる"ダーム ド サッラシ" のワイン(経営企画室 藤野晃治)

 

ガイヤックのスエル村でワイン造りを営む生産者、ダーム ド サッラシ。畑から畑へと移動する道すがら、森の中を抜け、鳥の声を聞いて思うのは、「自然環境との共生」というマリーの言葉の意味でした。私たちインポーターは、ボトルに詰まったワインを輸入して、皆様にお届けしています。そのワインの美味しさは何よりも重要ですが、そこに至る過程で生産者がひとつひとつの物事に気を配り、一所懸命に仕事をして、美味しい葡萄を育てている事実があることを、皆様にしっかりとお伝えしなければならないと強く感じるひとときとなりました。ダーム ド サッラシの美味しいワインを、ひとりでも多くのお客様にお楽しみいただけましたら幸いです。

株式会社稲葉 経営企画室 藤野 晃治

 

 

★次回は、フランス南西地方、マディランの生産者「ドメーヌ ラウゲ」をご紹介します。

 

 

ダーム ド サッラシのワイン一覧

レスプリ テロワール ガイヤック ブラン (FD-288/白・辛口)

レ トロワ シェーヌ ガイヤック ブラン (FD-289/白・辛口)

レ ペゾ ガイヤック ブラン (FD-290/白・辛口)

タストメ ガイヤック ルージュ (FD-291/赤・フルボディ)

レスプリ テロワール ガイヤック ルージュ (FD-292/赤・フルボディ)

レ フォンタニーユ ガイヤック ルージュ (FD-293/赤・フルボディ)

ヴァンダンジュ タルディヴ ガイヤック ブラン (FD-294/白・甘口)

 

➡「ダーム ド サッラシ」について、もっと知りたい方はこちら

 

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